金属ガラス: 局所的な違い

2011年06月27日

金属ガラスの粘弾性が示すナノスケールでの不均一性は、金属ガラスの形成や破断のメカニズムを説明できるかもしれない

図1:金属ガラスの表面をなぞるナノスケールのチップの位相変化。この図から表面の粘弾性が不均一であることがわかる。画像の幅は約200 nm。
図1:金属ガラスの表面をなぞるナノスケールのチップの位相変化。この図から表面の粘弾性が不均一であることがわかる。画像の幅は約200 nm。

© 2011 APS

大抵の金属は構成原子が規則的に並んだ結晶構造をとっているが、ガラスのような構造をもつアモルファス金属には、原子の秩序がほとんど(あるいは全く)存在しない。しかし、この構造ゆえに、結晶性金属よりもいくつかの点で優れた特性を示す。たとえば、容易に軟化させて成形できるうえ、同じ組成の結晶性金属よりも強度が高く変形させやすいことが多い。

金属ガラスは、高温の金属融液を高速で冷却し、原子が再配列して結晶化するのを妨げることにより形成される。普通の金属と同じように高い導電性を示す一方、強度と粘弾性にも優れている。金属ガラスは数十年にわたって研究されており、当初は均一な特性をもつと考えられていたが、最近は、ナノスケールでは不均一であると考えられるようになってきた。このたび、東北大学原子分子材料科学高等研究機構(AIMR)および金属材料研究所のMingwei Chen(陳明偉)教授、Yanhui Liu助教および共同研究者らは、金属ガラスのナノスケールでの弾性特性を評価した1

研究チームは、RF(高周波)マグネトロンスパッタリング法により、原子レベルで平坦な、厚さ2 μmの金属薄膜を作製した。そして、ジルコニウム、銅、ニッケル、アルミニウムからなるこの薄膜が、ガラス状の構造をもつことを示した。

次に、研究チームのメンバーである中嶋健准教授と西敏夫教授が開発した手法(本来はポリマー材料向けに開発された手法であるが、金属ガラスにも適していることがわかった)を用いて、その金属ガラスの表面を調べた。この手法では、先端の半径がわずか1 nmという鋭いチップ(探針)がついている振動カンチレバー(片持ち梁)で金属ガラス膜の表面をなぞり、探針とガラス表面の相互作用を利用して、探針の振動の位相変化からチップ直下の材料の粘弾性によるエネルギー散逸を計算することができる。同時に、ガラス表面の形状も評価できる。

陳教授らは、金属ガラス膜の粘弾性が均一ではなく、3 nmの距離で10%程度変化することを見いだした(図1)。これに対して、膜の高さが同程度変化する距離は、約9 nmだった。2つの数字の違いは、位相データが固有の粘弾性を反映しており、表面粗さとは無関係であるという解釈を裏付けている。

金属ガラスの粘弾性が不均一であることは、他の領域よりも原子がゆるく詰まっている領域があることを示唆しており、金属ガラスの破断や形成のメカニズムの解明に役立つ可能性がある。たとえば、粘弾性の高い領域は、機械的応力を加えると、他の領域よりも強く変形すると予想される。「私たちのデータは、金属ガラスの原子モデルと巨視的モデルの間のギャップを埋めているのです」と陳教授は言う。「特に、金属ガラスが液体的な相に転移していく過程の理解に役立つかもしれません」。

References

  1. Liu, Y. H., Wang, D., Nakajima, K., Zhang, W., Hirata, A., Nishi, T., Inoue, A. & Chen, M. W. Characterization of nanoscale mechanical heterogeneity in a metallic glass by dynamic force microscopy. Physical Review Letters 106, 125504 (2011). | article

このリサーチハイライトは原著論文の著者の承認を得ており、記事中のすべての実験データは同著者から提供されたものです。