エネルギー貯蔵: ナノスケールの細孔から広がるスーパーキャパシタの可能性

2011年05月30日

ナノポーラス金膜の細孔に無機結晶を成長させることによって、電荷貯蔵デバイスの充電速度とエネルギー密度が向上する

図:金(暗い青色)と結晶性MnO2(明るい青色)が密着していることを示す透過電子顕微鏡像
図:金(暗い青色)と結晶性MnO2 (明るい青色)が密着していることを示す透過電子顕微鏡像
 

Ref. 1 © 2011 M. Chenより

風力タービンや太陽電池などの「環境にやさしい」エネルギー技術は、エネルギー源が気候変動に左右されやすいため、需要と供給のバランスがとれない問題に直面することが多い。 この問題を克服する方法の1つに、スーパーキャパシタの利用がある。スーパーキャパシタとは、電解質に触れている2つの金属電極の表面に陽イオンと陰イオンがそれぞれ層を形成する現象を利用して、すみやかに電気を貯蔵するデバイスである。こうした電気二重層スーパーキャパシタは極めて耐久性が高いが、エネルギー貯蔵密度が不十分なため、広く普及するには至っていない。

東北大学原子分子材料科学高等研究機構(AIMR)のXingyou Lang助教、平田秋彦助教、藤田武志准教授およびMingwei Chen(陳明偉)教授は、二酸化マンガン(MnO2)などの遷移金属化合物を電極に用いたスーパーキャパシタの作製に取り組んでいる。スーパーキャパシタは「擬似容量」とよばれる電子移動過程によって電荷を貯蔵するが、これまでMnO2の電気伝導性が低いため、充放電速度が限られてきた。そこで、研究者らはこのたび、ナノスケールの細孔を持つ金膜(ナノポーラス金膜)にMnO2をめっきしたものを電極に使うことによって、高速充電特性と高い電気貯蔵能力を兼ね備えたスーパーキャパシタの開発に成功した1

MnO2の電気伝導性の問題を解決するためにこれまで試みられてきたのは、MnO2を導電性ポリマーやカーボンナノチューブと組み合わせる方法だった。一方、陳教授らのチームはナノ構造を持つMnO2-金複合材料を作製する方法をとった。この方法ではまず、銀-金合金から選択的に銀だけをエッチングして、無数のナノ細孔があいた薄い金シートを得る。次に、気相反応を利用して、その細孔チャネル内にMnO2ナノ結晶を成長させる。この結晶成長が、スーパーキャパシタの性能に極めて重要な影響を及ぼすことがわかった。結晶を析出させすぎるとナノ細孔が埋まってしまい、電気二重層効果が損なわれるし、結晶成長が足りないと、良好な擬似容量が得られない。最後に、ナノ構造電極と電解液をプラスチックに封入すると、薄くて柔軟なスーパーキャパシタが完成する。

陳教授らのスーパーキャパシタは優れた電荷貯蔵容量を示し、エネルギー密度は他のMnO2電極の最大20倍になった。また、MnO2結晶と金表面との原子レベルの接着(図参照)が、高分解能電子顕微鏡によって確認され、ほぼ理想的な高速充電挙動を示していることが明らかになった。「金とMnO2とでは格子も化学特性も明らかに異なるため、そのような優れた界面が形成されることは予想していませんでした」と陳教授は言う。

これらの優れた特性に加えて、3次元ナノポーラス構造中をイオンが高速で拡散するという特性もあり、今回の高性能スーパーキャパシタはさらに発展していく可能性がある。陳教授らのチームは現在、リチウムイオン電池の電極にこのMnO2–金複合材料を利用することを検討している。また、エネルギー密度がさらに高い複合ナノポーラス材料の開発も試みている。

References

  1. Lang, X., Hirata, A., Fujita, T. & Chen, M. Nanoporous metal/oxide hybrid electrodes for electrochemical supercapacitors. Nature Nanotechnology 6, 232–236 (2011). | article

このリサーチハイライトは原著論文の著者の承認を得ており、記事中のすべての実験データは同著者から提供されたものです。