フォトニクス: 高輝度な白色光

2010年10月25日

新世代の酸化亜鉛系紫外発光ダイオードが実証された

図1: 緑色蛍光体と組み合わせたZnO系紫外発光ダイオードの概略図。右上は動作中のLEDの写真。
図1: 緑色蛍光体と組み合わせたZnO系紫外発光ダイオードの概略図。右上は動作中のLEDの写真。
 

© 2010 AIP

白色発光ダイオード(LED)は、自動車のヘッドライトをはじめとする様々な用途で、白熱電球に替わる照明となりつつある。しかし、現世代の白色LEDには、カラーバランスが青寄りになるという問題がある。このたび、東北大学原子分子材料科学高等研究機構(AIMR)の研究者らは、ほかの国内研究機関と共同で、酸化亜鉛(ZnO)化合物を用いることによりこの問題を解決できる可能性があること、さらにZnO系LEDの作製も比較的容易であることを実証した1

研究チームを率いる川崎雅司教授は、「固体照明市場は急速に拡大しており、現在では一兆円に迫っています。ZnO系LEDは、製造コストを非常に低く抑えられる可能性があるなどの理由から、この市場に浸透できる可能性があると考えています」と話す。

現在市販されている白色LEDの白色光は、窒化ガリウム(GaN)系LEDの青色発光で光変換蛍光体を励起することにより作られている。しかし、最高のカラーバランスを得るには、青色光ではなく紫外光で蛍光体を励起する必要がある。従来の青色LEDに用いられているGaNの青色発光を紫外線領域にシフトさせることは、現実的なコストで作製できそうな基板が見当たらないことから、早期の実用化は困難と考えられている。

これに対して、今回紫外発光強度の改善に成功したZnO系LEDは、市販のZnO基板の上に薄膜を成長させることで容易に作製できる。しかし、標準的な工業用成長プロセスでは、高品質の発光薄膜を作製するのは非常に困難だった。たとえば、ZnO系LEDを作製するために開発された従来のレーザー堆積法は、極端な処理条件や大幅な温度変化を必要とし、大量生産には不向きであった。

川崎教授らは、レーザー堆積法の代わりに「分子線エピタキシー」法を用いてZnO基板上に薄膜を成長させた。分子線エピタキシー法とは、薄膜作製用元素の高純度の蒸気に基板をさらすことで、その表面に均一な原子層を成長させる方法であり、幅広く利用されている。研究者らは、ZnO系LEDのもとの青色発光を紫外線領域にシフトさせるため、マグネシウムを添加したZnO薄膜を成長させた。また、薄膜の成長工程とデバイスの細部構造を最適化することにより、非常に効率のよい紫外発光を実証することができた。

このデバイスを商業用途に供するには、さらに改良して効率を約100倍に上げる必要がある。長い道のりのように見えるが、今回のデバイスはすでに、以前のZnO系LEDの1万倍の効率を上げている。「GaN系LEDとの効率の差は、電極の接触抵抗を低減することにより、容易に埋めることができるでしょう」と川崎教授は言う。 同教授は、このような高効率化が実現すれば、現在優勢を占めているGaNにZnOが対抗できるようになるばかりでなく、高効率紫外レーザーの開発にもつながるであろうと確信している。

References

  1. Nakahara, K., Akasaka, S., Yuji, H., Tamura, K., Fujii, T., Nishimoto, Y., Takamizu, D., Sasaki, A., Tanabe, T., Takasu, H., Amaike, H., Onuma, T., Chichibu, S. F., Tsukazaki, A., Ohtomo, A. & Kawasaki, M. Applied Physics Letters 97, 013501 (2010). | article

このリサーチハイライトは原著論文の著者の承認を得ており、記事中のすべての実験データは同著者から提供されたものです。