インターフェース: 埋もれた界面を可視化する

2010年06月28日

ワイドバンドギャップ半導体の炭化ケイ素と、金属とのコンタクトにおける炭素原子の重要性を証明

図1: SiCとTi3SiC2の界面におけるZコントラストSTEM像。チタン原子を黄色い丸で、シリコン原子を緑色の丸で囲んである。白い点で示す炭素原子は、画像では明瞭ではないが、その位置は理論計算から推測される。
図1: SiCとTi3SiC2の界面におけるZコントラストSTEM像。チタン原子を黄色い丸で、シリコン原子を緑色の丸で囲んである。白い点で示す炭素原子は、画像では明瞭ではないが、その位置は理論計算から推測される。

© 2010 Z. Wang
 

金属と半導体の界面における原子配列は、電子デバイスの効率を左右する重要な役割を果たしている。この界面の微細構造観察は、より高性能の電子デバイスの開発に不可欠であるが、表面から深いところに埋もれているため容易ではない。東北大学原子分子材料科学高等研究機構(AIMR)の幾原雄一教授らのグループは、このたび、最先端の球面収差補正走査透過電子顕微鏡法と理論計算を組み合わせることで、この界面を原子レベルで可視化・解析することにはじめて成功した1

「電子デバイスを作るには、導線を使ってデバイス同士を接続しなければなりません。そのため、金属と半導体の間に信頼性が高く抵抗の低いコンタクトを形成することが、デバイスの効率を左右する重要な課題なのです」とAIMRの王中長助教は説明する。金属-半導体界面には「ショットキー障壁」と呼ばれる高抵抗障壁が形成されることがあり、これが電子の流れを妨げ消費電力を増加させる原因となっている。

ショットキー障壁の問題は、適切な種類の金属を選択し、アニール処理(すばやく高温まで加熱する処理)を行うことで克服できる。炭化ケイ素(SiC)は、高電力・高温での応用が期待されているワイドバンドギャップ半導体だが、チタンアルミニウム(TiAl)合金との間で、そうした低抵抗コンタクトを形成することがわかっている。多くの研究者は、蒸着されたTiAl合金とSiCの間に金属化合物Ti3SiC2が新たに形成されると考えていたが、この界面がコンタクト抵抗を下げるしくみは未だ不明であった。

幾原教授らの研究チームは、SiC基板上にチタンとアルミニウムの相を交互に蒸着した後、1000 °Cで数分間アニールし、その界面を異なる原子種を区別できるZコントラスト走査透過電子顕微鏡法(STEM)により、原子レベルの観察を行った。図1はそのSTEM像であるが、界面は原子レベルで平坦であり、チタン原子は明るい点で、シリコン原子は暗い点として観察されることが分かる。

この界面構造を定量的に解析するために、96種類の可能性のある界面構造を系統的に第一原理計算を行った結果、2種類の界面構造が実験像と合致した。これらはいずれも、金属(Ti3SiC2)のシリコン原子が半導体(SiC)のシリコン原子の間に位置している構造であったが、一方の構造には、炭素原子(低原子番号のためSTEM像では観察できない)が界面に位置していた(SiCSi配列)。さらに詳細な計算を行った結果、このSiCSi配列がSiSi界面よりも安定であり、炭素が存在するおかげでショットキー障壁が大幅に小さくなることが示された。

「私たちの結果は、たった一枚の炭素原子層がコンタクト抵抗を下げるうえで重要な役割を果たし、高効率SiCコンタクトの形成に役立つことを示唆しています」と王助教は話す。

References

  1. Wang, Z., Saito, M., Tsukimoto, S. & Ikuhara, Y. Interface atomic-scale structure and its impact on quantum electron transport. Advanced Materials 21, 4966–4969 (2009). | article

このリサーチハイライトは原著論文の著者の承認を得ており、記事中のすべての実験データは同著者から提供されたものです。