超伝導: 相互作用が重要

2010年01月25日

新種の超伝導体の特性は電子のエネルギー分布によって決まる

図1: 鉄プニクタイド超伝導体のフェルミ面。色のグラデーションは光電子分光を用いて測定したフェルミ面を示し、赤線と青線は計算したフェルミ面を示す。フェルミ面の強く相互作用している部分を赤い矢印で示す。
図1: 鉄プニクタイド超伝導体のフェルミ面。色のグラデーションは光電子分光を用いて測定したフェルミ面を示し、赤線と青線は計算したフェルミ面を示す。フェルミ面の強く相互作用している部分を赤い矢印で示す。

超伝導体の物理的特性の研究は進んでおり、非常に低い温度で電気抵抗が消失することなどは一般知識としてよく知られている。 しかし、そのような挙動を生じさせる基本的機構のことになると、未だ解明されていない問題が数多く残っている。なかでも、2008年に発見されたばかりの新種の「高温」超伝導体群である鉄「プニクタイド」系超伝導体についてはほとんど分かっていない。

このたび、東北大学原子分子材料科学高等研究機構(AIMR)の研究者らは、海外の共同研究者らとともに、この新種のメカニズムについて画期的な報告をした1。 それは、「異なる電子状態にある電子同士の相互作用が特性に重要な役割を果たしている」というものだ。

鉄プニクタイド系超伝導体は、よく知られている銅酸化物系超伝導体と共通点が多い。どちらの物質も超伝導の基礎となる複雑な2次元層状構造をもち、比較的高い温度(50K付近)で超伝導が起こり始める。

超伝導に関与する高エネルギー電子は、「伝導帯」と呼ばれる領域の最上部にあたるエネルギー状態を占めている。これらの状態を「フェルミ面」として3次元にプロットすると、結晶格子の対称性や各エネルギー準位の占有に関連する結晶の電子的特性を表すことができる。フェルミ面は、1つにまとまって球などの形になっている場合もあれば、小さなものがばらばらに並んでいる場合もある。

研究者らは、東北大学が保有する超高分解能光電子分光装置を用いてプニクタイド超伝導体を観察し、複雑に配置されたフェルミ面の各部の間の関係を調べた(図1)。 そして、この種の超伝導体では小さなフェルミ面同士の相互作用(ネスティング)が強いことを見いだした。研究チームを率いた高橋隆教授は、「私たちの研究は、フェルミ面ネスティングがプニクタイドにおける超伝導の重要かつ一般的な特徴であることを明確に証明したのです」と説明する。

研究者らは、強い相互作用を示すプニクタイド超伝導体は、弱い相互作用を示すものよりも超伝導転移温度が高いことを明らかにした。また、プニクタイド系と銅酸化物系とでは基礎となる超伝導機構に関連性があるものの、プニクタイド系のフェルミ面ネスティングは、銅酸化物系よりもはるかに大きな役割を果たすことも明らかにした。

高橋教授によると、今回明らかになったプニクタイド系と銅酸化物系の重要な相違に基づいて、異なる結晶構造をもつサンプルをさらに研究し、電子がどのような状態にあると強いネスティングや高い転移温度につながるのかを正確に決定する必要があるという。「最終的には、フェルミ面ネスティング条件を十分に満たす新しい超伝導体を探索することによって、もっと高い転移温度を示す超伝導体を発見することができるかもしれません」と高橋教授は付け加えた。

References

  1. Terashima, K., Sekiba, Y., Bowen, J. H., Nakayama, K., Kawahara, T., Sato, T., Richard, P., Xu, Y.-M., Li, L. J., Cao, G. H., Xu, Z.-A., Ding, H. & Takahashi, T. Fermi surface nesting induced strong pairing in iron-based superconductors. Proceedings of the National Academy of Sciences 106, 7330–7333 (2009). | article

このリサーチハイライトは原著論文の著者の承認を得ており、記事中のすべての実験データは同著者から提供されたものです。