超伝導体: 絶縁性材料をスイッチさせる新たな手法

2009年07月27日

化学的に不純物を添加することなく、電場のみを用いて、絶縁性材料を超伝導体に変えることに成功した

図1: ゲート電圧(VG)を3Vにして温度を下げていくと、0.4KのところでSrTiO3の抵抗(RS)が急激に減少してゼロになる。挿入図は、SrTiO3を用いた電気二重層トランジスタの構造の模式図。

図1: ゲート電圧(VG)を3Vにして温度を下げていくと、0.4KのところでSrTiO3の抵抗(RS)が急激に減少してゼロになる。挿入図は、SrTiO3を用いた電気二重層トランジスタの構造の模式図。

ある種の材料では、一定の臨界温度よりも低い温度になると電気抵抗がゼロになり、エネルギーの損失なしに電流が流れるようになる。これが超伝導という現象であり、科学的にも実用的にも無限の可能性を秘めている、極めて重要な物理現象である。

超伝導は、材料内の電荷を運ぶ伝導キャリア(負電荷の場合は電子、正電荷の場合は「正孔」)の濃度によって制御される。材料を超伝導体に変えるためには、その結晶格子に不純物を添加する化学的な手法が用いられることが多い。しかし、こうした修飾はしばしば不可逆的であり、必然的に構造の秩序を乱してしまう。

代替的アプローチとして、材料に外部から電場をかけて、材料の伝導キャリアの密度を調整するという手法によっても超伝導体を作ることができる。この方法では金属を超電導にすることには成功していたが、化学的に不純物を添加していない絶縁体については、電場をかけても誘起できる伝導キャリアの濃度が低すぎて超伝導体にすることができなかった。

この問題を解決すべく、東北大学原子分子材料科学高等研究機構(AIMR)の川崎雅司教授と上野和紀助教が率いる研究チームが、絶縁体として知られるチタン酸ストロンチウム(SrTiO3)を電気的な手法で超伝導状態にすることに成功した1。「電場のみを用いて絶縁性材料を超伝導体に変えられることが、この研究により初めて実証されました。これは、50年以上も前から科学者たちが夢に見てきたことでした」と川崎教授は言う。

研究チームは、電池をヒントにした新しい素子を開発し、電気的な手法によりSrTiO3の伝導キャリアの制御を行った。Nature Materialsに掲載された論文では、彼らが製作した「電気二重層トランジスタ」という電界効果素子について述べられている。電気化学反応を用いた一般的な電池では、電解質を2つの電極ではさんで電圧をかけると、電解質中の陽イオンと陰イオンが別々の電極に向かって移動し、電荷が分離する。研究者たちは今回、一方の電極をSrTiO3と置き換えた。そして、このSrTiO3を白金線電極とともに有機電解質に接触させ、2.5V以上の電圧をかけると、SrTiO3の電気抵抗が急激に減少し、系は金属に近い挙動を示した。そして、絶対零度に近い0.4Kまで温度を下げると、それまで絶縁体だったSrTiO3が超伝導体へと変化したのである(図1)。SrTiO3の表面を調べたところ、この変化は電気化学的な反応ではなく、表面付近への正電荷の蓄積に起因していることがわかった。さらに、電気的な手法により伝導キャリアを制御されたSrTiO3が示す超伝導体としての挙動は、化学的に不純物を添加されたサンプルのそれとは異なっていることもわかった。

「今回の研究により、これまでとは異なる手法での超伝導研究が可能になり、新しい超伝導体の候補材料の選択肢が大きく広がりました」と上野助教は語った。

References

  1. Ueno, K., Nakamura, S., Shimotani, H., Ohtomo, A., Kimura, N., Nojima, T., Aoki, H., Iwasa, Y. & Kawasaki, M. Electric-field-induced superconductivity in an insulator. Nature Materials 7, 855–858 (2008). | article

このリサーチハイライトは原著論文の著者の承認を得ており、記事中のすべての実験データは同著者から提供されたものです。