表面構造: 浮かび上がるチタン原子像

2009年07月27日

重要な触媒材料である酸化チタン(チタニア)の表面原子構造の問題を、超高分解能顕微鏡法で解決

図1: 超高圧高分解能透過型電子顕微鏡を使い、[001]方向から観察した酸化チタンTiO2 (110)の表面構造。表面において再構成原子が観察できる。
図1: 超高圧高分解能透過型電子顕微鏡を使い、[001]方向から観察した酸化チタンTiO2 (110)の表面構造。表面において再構成原子が観察できる。

 

化学反応の促進に用いられる酸化チタン(TiO2)などの触媒材料は、表面での相互作用を通して機能するため、これを理解するためには表面の原子配列を正確に知ることが極めて重要となる。しかし、その表面構造をめぐっては、長年論争があった。

このほど、東北大学原子分子材料科学高等研究機構(AIMR)と東京大学の研究者の共同研究1により、酸化チタンの表面の原子配列が決定され、その論争の突破口が開かれた。

結晶材料は原子が3次元的に規則正しく整列した構造をもっているため、バルクの結晶構造を解析することは比較的容易である。しかし、結晶材料の表面では、結晶の完全な対称性が乱れて原子の位置や化学結合が変化してしまうため、その解析は一般に難しいとされている。研究チームに参加するWPI-AIMRの幾原雄一教授は、「触媒の特性やそのメカニズムを理解するためには、表面緩和構造を完全に決定することが重要です」という。

酸化チタンの表面構造についてはこれまでにも数多くの解析結果が報告されてきたが、最表面原子の位置とその高さを実験的に正確に決定することは困難であった。当研究者らは今回、超高圧電子顕微鏡法と走査透過電子顕微鏡法を組み合わせた表面の断面観察を行うことによって、初めて酸化チタンの表面緩和構造の定量的な解析に成功した(図1)。

研究チームは酸化チタンの表面構造を表面に平行な2方向から観察することによって、表面緩和構造の3次元モデルを構築し、その構造をこれまでの理論研究で提案された2つの構造モデルと比較した。一方のモデルでは、表面に侵入型で入るチタン原子がチタンのみから構成される原子カラム上に位置しているのに対して、もう一方のモデルでは、表面のチタン原子がチタンと酸素から構成される原子カラムの直上に位置する構造になっている。本実験の結果は、後者の予測を明確に裏付けるものだった。

今回の研究結果は、酸化チタンの表面におけるチタンの役割がこれまで考えられていたよりも重要であることを示唆している。幾原教授は、「我々の実験結果は酸化チタン表面での触媒メカニズムの理解に大きく貢献するでしょう」と指摘する。

触媒応用では、酸化チタンの表面は共触媒として働く金や白金などの貴金属で機能化されることが多い。ゆえに、これらの金属と酸化チタンとの界面の構造を研究することが次の重要なステップとなると考えられている。「こうした研究により、金-酸化チタンの触媒特性の起源とその本質を理解することが可能となるでしょう」と幾原教授は語っている。

References

  1. Shibata, N., Goto, A., Choi, S.-Y., Mizoguchi, T., Findlay, S. D., Yamamoto, T. & Ikuhara, Y. Direct imaging of reconstructed atoms on TiO2 (110) surfaces. Science 322, 570–573 (2009). | article

このリサーチハイライトは原著論文の著者の承認を得ており、記事中のすべての実験データは同著者から提供されたものです。