産総研・東北大 数理先端材料モデリングオープンイノベーションラボラトリを設立

2016年06月30日

国立研究開発法人 産業技術総合研究所
国立大学法人 東北大学

東北大学片平キャンパスに「産総研・東北大 数理先端材料モデリングオープンイノベーションラボラトリ」(MathAM-OIL)を設立

構造・機能・プロセスの相関原理の明確化による材料開発の加速化を目指す

発表概要

国立研究開発法人 産業技術総合研究所【理事長 中鉢 良治】(以下「産総研」という)は、平成28年6月30日に「産総研・東北大 数理先端材料モデリングオープンイノベーションラボラトリ」(MathAM-OIL)を国立大学法人 東北大学【総長 里見 進】(以下「東北大」という)と共同で設立しました。産総研のオープンイノベーションラボラトリ(OIL)注1)は、産総研の第4期中長期計画(平成27年度~31年度)で掲げている「橋渡し」を推進していくための新たな研究組織の形態で、東北大 原子分子材料科学高等研究機構【機構長 小谷 元子】(以下「AIMR」という)と連携し、離散幾何解析学注2)などの数理科学と計算材料科学による材料モデリング研究の技術の体系化と、材料の構造・機能・プロセスの相関原理の明確化による材料開発の加速化を目指します。

製品を構成する部素材の構造等が複雑になり、製品開発期間が長期化する傾向に対して、鍵となる機能性材料の飛躍的な性能向上や新しい機能による製品の差別化による新しい産業・市場の創出が求められています。さらに、機能性材料は、個々の市場規模は小さいものの、各市場で高いシェアを確保できる分野で、日本発の材料が市場を獲得するためには、それらの市場導入をスピードアップする技術が重要になってきています。本OILで取り組む数理科学と計算材料科学融合により材料の構造・機能・プロセスの相関原理を明確にする技術は、超先端材料の設計をスピードアップし、日本での材料・デバイス開発を推進する基盤技術として期待されています。

東北大AIMRは「数学」、特に離散幾何解析学を活用する複雑材料の構造解析などの材料構造解析研究で世界をリードしています。一方、産総研は、機能性材料コンピュテーショナルデザイン研究センター(CD-FMat)【研究センター長 浅井 美博】を中心に、素材メーカーやデバイスメーカー、大学などとのコンソーシアムや共同研究を通じ、機能性材料などの産業化につながる研究開発の実績が多くあります。

そこで、産総研と東北大は新たな産総研の拠点であるMathAM-OILを東北大片平キャンパスに設置し、相互のシーズ技術を合わせ、材料の構造・機能・プロセスの相関原理の明確化を目指した研究開発を連携して実施します。それにより、機能性材料開発のスピードアップにつながる産業化・実用化のための研究開発を進めていきます。

MathAM-OILで行う主な研究

数理―計算材料科学融合による先端材料創出研究開発

離散幾何解析学を活用する構造抽出技術や、第一原理・分子動力学手法による反応経路設計技術、無秩序な中の秩序構造の抽出技術などの数理マテリアルインフォマティックス注3を強力な柱として、超先端材料の設計を促進します。具体的には、これまで秩序系で確立した開発スキームを、数理科学により無秩序系へ拡張し、広範囲な材料に対して有効な普遍的手法を開発・提供することで、次世代のエレクトロニクス材料や電池材料など、機能性材料の応用の幅を格段に向上させることを目指します。また、幾何学的手法と計算科学的手法による材料創出に関する技術の体系化により、材料の構造・機能・プロセスの相関原理を明確化し、機能性材料開発の効率化・加速化やこれまでにない発想での高付加価値な材料の開発のための基盤技術を確立し新産業創出へつなげます。

pr_160630_01.png産総研・東北大 数理先端材料モデリングオープンイノベーションラボラトリ

用語の説明

注1)オープンイノベーションラボラトリ(OIL)
経済産業省が平成28年度から始める「オープンイノベーションアリーナ」事業の一環として行われるもので、卓越した基礎研究に基づく技術シーズをもつ大学などに産総研が研究拠点を設置し、その大学と産総研が集中的・組織的に研究を行うことにより、技術の実用化・「橋渡し」の加速や、「橋渡し」につながる目的基礎研究の強化を目的としたものです。これまで、平成28年4月に名古屋大学と共同で「産総研・名大 窒化物半導体先進デバイスオープンイノベーションラボラトリ」(GaN-OIL)を、平成28年6月1日に東京大学と共同で「産総研・東大 先端オペランド計測技術オープンイノベーションラボラトリ」(OPERANDO-OIL)を設立しています。
注2)離散幾何解析学
「離散」は「連続」の対立概念。さまざまな形を離散的にとらえて幾何学として扱う新しい領域です。確率分布に隠れるような原子や分子の配置や運動の違いを表現し、目的に応じてそれらを最適化する数学的手法の開拓を行います。本OILでは、原子や分子などのミクロ構造を離散曲面ととらえ、隠れた幾何構造を記述子により数値化・可視化し、マクロな物性(連続体)との関係を明らかにすることにより、形の違いを最適化する手法を提供します。
注3)数理マテリアルインフォマティックス
これまでに得られてきた実験による物質の構造や機能の情報や、理論的な計算シミュレーションで創出されるデータなどについて、数学や情報処理技術を駆使して、新たな機能性材料設計を進める手法。米国で進められているマテリアル・ゲノム・イニシアティブや国内のマテリアルズインテグレ―ションシステムなどの動きとも関係します。

問い合わせ先

国立研究開発法人 産業技術総合研究所
材料・化学研究領域 研究戦略部

TEL : 029-862-6031

国立大学法人 東北大学 産学連携機構
総合連携推進部

TEL : 022-217-6034

取材に関する窓口

国立研究開発法人 産業技術総合研究所
企画本部 報道室

TEL/FAX : 029-862-6216/029-862-6212
E-mail : press-ml*aist.go.jp(*を@に置き換えてください)

国立大学法人 東北大学 産学連携機構
総合連携推進部

TEL/FAX : 022-217-6034/022-217-6047
E-mail : liaison*rpip.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)