ナノロッド: 低温域で機能する酸素吸蔵放出材料

2016年03月28日

低温域で高い酸素吸蔵放出能を示す酸化セリウムナノロッド材料が、簡単な処理で作製された

温和な処理温度で作製された酸化セリウムナノロッドの高分解能透過電子顕微鏡画像。
温和な処理温度で作製された酸化セリウムナノロッドの高分解能透過電子顕微鏡画像。

© 2016 Naoki Asao and Koji Nakayama

東北大学原子分子材料科学高等研究機構(AIMR)の研究者らは、温和な処理温度(70℃)で酸化セリウムのナノロッド(棒状の微粒子)を作製する新しい方法を開発した。このナノロッドは、200℃以下の低温域で優れた酸素吸蔵放出能を示すため、自動車の排気ガス浄化触媒の働きを助ける助触媒として有望である1

自動車に搭載される触媒コンバーターは、排気ガスに含まれる一酸化炭素や窒素酸化物などの有害汚染物質を、より安全な化合物に変換する装置である。この装置に用いられる三元触媒(炭化水素、一酸化炭素、窒素酸化物を浄化する触媒)にとって、酸素吸蔵放出能を示す酸化セリウム系材料は助触媒として魅力的だ。

一般に、ナノ構造体を作製する従来法の多くは高い処理温度を必要とする。この高温下では結晶の成長が促進されてしまうため表面積が小さくなり、触媒性能が低下する傾向がある。そのため、400℃以下の低温域で酸素吸蔵放出能を持つ酸化セリウムナノ構造体を作製することはこれまで困難であった。

今回、浅尾直樹教授と中山幸仁准教授が率いるAIMRの5人の研究者からなるチームは、低温域でも優れた酸素吸蔵放出能を示す酸化セリウムナノロッドを温和な処理温度で作製する方法を開発した。

作製したナノロッドを高分解能透過電子顕微鏡法で観察したところ、その直径は約5~7ナノメートルであった(図参照)。穏やかな処理温度が、このような微細なナノ構造の構築を可能にしたのである。

本作製法は、同じ研究チームが以前チタン酸ナトリウムのナノワイヤーを作製するために開発した方法を酸化セリウムの作製に応用したものである(過去のハイライト参照)。基本的には、セリウムアルミニウム合金リボンをアルカリ媒体中に浸すだけで、アルミニウムの溶出とセリウムの酸化を引き起こす。重要なのは、この一連のプロセスが温和な条件下で起こることだ。

「今回の手法は、これまでの高温処理方法とは全く違います。ポイントは、温和な作製条件です。これにより微細構造の構築が可能になるのです」と浅尾教授は言う。「チタン酸ナノワイヤーの研究を行っているときから、他の金属酸化物でも本手法を利用すれば面白い特性が得られるだろうという予感はありましたが、結果は予想をはるかに超えるものでした」。

浅尾教授は、今回の新手法の可能性に非常に期待していて、「この研究は自動車の排ガス浄化システムに影響を与える可能性があります」と言う。更に研究チームは、ナノロッドの他の用途として、燃料電池、紫外線遮蔽剤、太陽電池、センサーなどを考えている。

今後は、作製条件の最適化やセリウムアルミニウム母合金の組成の調節などにより、ナノロッドの酸素吸蔵放出能をはじめとする様々な性能を向上させ、実用に適した材料開発を行っていくつもりである。

References

  1. Ishikawa, Y., Takeda, M., Tsukimoto, S., Nakayama, K. S. & Asao, N. Cerium oxide nanorods with unprecedented low-temperature oxygen storage capacity. Advanced Materials 28, 1467−1471 (2016). | article

このリサーチハイライトは原著論文の著者の承認を得ており、記事中のすべての実験データは同著者から提供されたものです。