室温かつ短時間で、リチウム金属とガーネット型酸化物固体電解質の界面形成に成功
室温かつ短時間で、リチウム金属とガーネット型酸化物固体電解質の界面形成に成功
―全固体電池の実用化を後押しする新しい手法―
発表のポイント
- 超音波接合(1)により、リチウム金属とガーネット型酸化物固体電解質(LLZO)の界面を室温で、かつ数秒という短時間で形成することに成功しました。
- 従来必要とされた中間層の導入や高温処理を用いず、界面抵抗を約225 Ω・cm2まで低減し、さらにAu層併用により約1.5 Ω・cm2を達成しました。
- 界面形成の新たな選択肢を示すことで、全固体電池の実用化を後押しする成果です。
概要
全固体リチウム金属電池は、高い安全性とエネルギー密度を兼ね備えた次世代電池として注目されています。その中でもガーネット型酸化物固体電解質 Li7La3Zr2O12(LLZO)は有力な材料とされていますが、リチウム金属との界面接触不良や表面に形成される絶縁性炭酸リチウム層(Li2CO3)により、高い界面抵抗が生じることが実用化の大きな課題とされてきました。
東北大学材料科学高等研究所(WPI-AIMR)の程建鋒 准教授、同大学金属材料研究所の加藤秀実 教授、同大学大学院工学研究科の福田幹久 大学院生らの研究チームは、金属接合に広く用いられている超音波接合法を応用し、室温かつ数秒という短時間でリチウム金属とLLZOの密着界面を形成することに成功しました。超音波振動により表面の絶縁層を破壊すると同時に、加圧下でリチウム金属が塑性変形し、硬質なLLZO表面に密着することを明らかにしました。超音波接合のみで界面抵抗は約225 Ω・cm2まで低減し、さらに薄い金(Au)層を併用することで約1.5 Ω・cm2を達成しました。
本成果は、高温処理や溶融リチウムを必要としない新たな界面形成手法を提示するものであり、酸化物系全固体電池の製造プロセス簡略化と高性能化に寄与することが期待されます。本研究成果は、2026年3月19日(現地時間)に学術誌Small Structuresに掲載されました。
詳細な説明
研究の背景
電気自動車や再生可能エネルギーの普及に伴い、安全で高性能な蓄電池への需要が世界的に高まっています。その有力候補として期待されているのが、可燃性の液体電解液を用いない全固体電池で、発火リスクの低減や高いエネルギー密度の実現が見込まれています。
全固体電池の中でもガーネット型酸化物固体電解質は、室温で高いリチウムイオン伝導性を示し、化学的にも安定であることから、次世代電池材料としてとくに注目されてきました。しかし、この材料とリチウム金属負極との界面形成は容易ではありません。
両者はいずれも固体であるため、実際に電流が流れる「真の接触面積」が小さくなりやすいという課題があります。さらに、固体電解質表面には空気中の水分や二酸化炭素の影響で炭酸リチウムなどの絶縁性物質が形成されやすく、このことが界面抵抗を著しく増大させてしまいます。この高い界面抵抗は、充放電効率の低下や出力特性の悪化につながり、実用化の大きな障壁となってきました。
これまでに、界面に金やスズなどの薄膜を導入する方法や、高温処理によって接触性を改善する手法などが検討されてきました。しかし、工程の増加やコスト上昇、高温条件の制約などが課題として残るため、室温かつ短時間で低抵抗な界面を形成できる新しい手法の確立が求められていました。
今回の取り組み
本研究グループは、金属同士の接合に広く用いられている超音波接合に着目し、リチウム金属とガーネット型酸化物固体電解質の界面形成に応用しました。超音波振動により表面の絶縁性炭酸リチウム層を破壊すると同時に、加圧下でリチウム金属が塑性変形し、硬い固体電解質表面に密着することを試みました。その結果、室温かつ数秒という短時間で両者を直接接合できることを確認しました。(図1)
超音波接合のみでも界面抵抗は大きく低減しましたが、さらに薄い金の中間層を併用することで界面抵抗を一段と低減できることを示しました。従来必要とされてきた高温処理や溶融リチウムを用いることなく、低抵抗界面を形成できる可能性を示しました。
今後の展開
本研究グループは今回、室温かつ短時間で低抵抗な界面を形成できることを示しましたが、界面の微細構造や接合メカニズムの詳細については、さらなる解析が必要です。研究グループは今後、界面近傍のナノスケール構造や化学状態をより精密に評価し、接合強度や長期安定性との関係を明らかにしていく予定です。
また、固体電解質表面の粗さや結晶粒界の状態が接合特性に与える影響についても、体系的に検討を進めます。材料の微細構造を最適化することで、より安定で再現性の高い界面形成手法の確立を目指します。
本研究グループはさらに、本手法を他の酸化物系固体電解質へと展開し、超音波接合を固体電解質とリチウム金属の一般的な界面形成技術として応用可能かどうかを検証していきます。これにより、酸化物系全固体電池の設計自由度を高め、実用化に向けた技術基盤の構築につなげていきたいと考えています。

図1. 室温で数秒間の超音波接合により形成された、リチウムと固体電解質の界面断面像
謝辞
本研究は、東北大学金属材料研究所(IMR)のGIMRTプログラム(課題番号:202412-CRKEQ-0206)、材料科学コアリサーチクラスター(CRC-MS)、ならびに公益財団法人東電記念財団の基礎研究助成の支援を受けて実施されました。
用語解説
論文情報
| タイトル: | Ultrasonic Welding of Garnet Solid Electrolytes to Lithium Metal: Achieving Intimate Interfacial Contact in Seconds |
|---|---|
| 著者: | Mikihisa Fukuda, Ying Li, Run-Zi Wang, Shin-ichi Orimo, Yutaka S. Sato, Hidemi Kato, Eric Jianfeng Cheng |
| 掲載誌: | Small Structures |
| DOI: | 10.1002/sstr.202500866![]() |
問い合わせ先
研究に関すること
東北大学材料科学高等研究所
准教授 程建鋒(研究者プロフィール)
| Tel: | 022-217-5990 |
|---|---|
| E-mail: | ericonium@tohoku.ac.jp |
報道に関すること
東北大学材料科学高等研究所(WPI-AIMR) 広報戦略室
| Tel: | 022-217-6146 |
|---|---|
| E-mail: | aimr-outreach@grp.tohoku.ac.jp |



