3つのターゲットプロジェクト

AIMRは以下の項目が次世代の材料科学にとって重要な視点であると認識し、これらを3つのターゲットプロジェクトとして焦点を当てることとしました。そして、これらの分野を高等数学の助けを借りて精査することにより、各現象のメカニズムや共通原理の解明を進めていきます。

数学的力学系に基づく非平衡材料

金属ガラスやポリマーのような非平衡材料の構造と物性、また、それらの形成メカニズムや安定性を解明し、非平衡状態に潜む共通原理に基づく新規機能の発現を目指す。

具体的なターゲット

金属ガラス、ポリマーガラス、ブロック重合体、生体模倣材料、超ハイブリッドや機能デバイスなどのグリーンな社会に貢献する材料、デバイスをターゲットとしていく。

トポロジカル機能性材料

電子の「スピン」や「エネルギーバンドのトポロジー」を起源とする機能、ナノポーラス金属の触媒が示す活性と「トポロジー」の間の関係などが研究対象として注目される。環境の変化に対応できるようなロバストな性質をもつトポロジカル材料の創製を目指す。

具体的なターゲット

省エネルギーに貢献するスピントロニクス材料、超伝導材料、MEMSデバイスや、ナノポーラス金属触媒、また、創エネルギーに貢献する光電変換(太陽電池)や熱電変換のための新材料をターゲットとしていく。

離散幾何解析に基づくマルチスケール階層性材料

原子・分子レベルから巨視的なバルク材料に至る階層構造、すなわち、短距離秩序(ナノクラスター)、長距離秩序(ナノ結晶)、結晶、多結晶レベルに至る階層的構造を理解し、新たな機能性材料を創製する。スケール間の橋渡しとマルチスケール構造から発現する機能の重要性が認識されており、サイズ的なインターフェース(スケール間連結)や空間的なインターフェース(粒界など)が鍵になると考えられる。

具体的なターゲット

階層構造を作ることによって、原子・分子・クラスター・ドメインの配列に見られる中距離・長距離秩序とその機能発現の関係を、階層との関連から解明していくこと、原子・分子レベルからマクロレベルの性質に至る界面プロセスを調べることによって、機能発現のメカニズムを理解していくことなどを目標とする。例えば、デバイスの電気伝導性の改善のための粒界の研究、省エネルギーにとって大切な摩擦の問題を改善していくための固液界面の研究、エネルギー貯蔵のためのナノポーラス・スーパーキャパシタ、そして、生体模倣材料などが具体的なターゲットなる。

数学-材料科学連携の組織の強化

これらのターゲットプロジェクトを成し遂げるため、数学-材料科学連携の組織の強化を図りました。まず、2人の教授が数学ユニットの主任研究者(PI)として着任し、更に、各プロジェクトにプロジェクトリーダーとサブリーダーを設置しました。リーダーとサブリーダーは各プロジェクトに関するいくつかのスタディグループを組織しました。更に平成23年度には、インターフェース研究者の国際公募を行い、68名の応募者から6名を採用しました(平成24年度着任)。彼らは理論研究者であり、特定のPIにはつかず、いくつかの実験研究室とともに研究活動を行い、彼らがもつ数学や理論の専門知識を活かして実験対象について新たなアイデアを吹き込んだり、実験結果の議論に貢献したり、材料制御に関して新たなアプローチを提案したりします。数学者と実験材料研究者のコミュニケーションの橋渡しをするのがインターフェース研究者が担う大きな役割です。