【3/13】第3回「AIMRセミナー」のご案内
講演者
富安 亮子 教授(九州大学 マス・フォア・インダストリ研究所)
講演題目
格子基底簡約理論の結晶構造への応用について
日時
2024年3月13日(水)16:00~17:00
会場
AIMR本館 2階セミナー室
講演要旨
講演は、10年前に公開した粉末回折用指数付け(ab-initio indexing)ソフトウェアCONOGRAPHの数理に関わる。この解析では、連続パラメータである格子定数と各回折反射に対応するミラー指数(整数ベクトル)が未知変数である。CONOGRAPHはITO/TREOR/DICVOLといった古典的なソフトウェアと比較して同程度の計算時間で成功率を20—40%向上させた。現在までに、電子線後方回折・透過電子顕微鏡(TEM)画像のab-initio indexingにも同じ考え方が適用されている。
この改善に、数学の厳密な理論がどのように活用されたかは、ソフトウェアユーザの間でも広く認識されていない。特に、格子基底簡約理論は、以下の3つの異なる部分問題の手法開発に有効であった。
- (a) トポグラフというグラフ構造を用いたab-initio indexingアルゴリズム、
- (b) 観測誤差を含む格子定数の対称性(ブラベー格子)推定の高速化、
- (c) 非常に近い結晶格子が何度も出力されることを回避するための,ユニットセル同一性判定。
結晶学において、格子基底簡約はNiggli-Eisenstein簡約が結晶格子を一意にパラメトライズするために用いられてきた。その派生として、(c)は数学だけで記述できる問題だが、分野横断的(代数・幾何と統計)な性質から、数学の外で主に議論されてきたようである。
近年、マテリアルズデザインの目的にも、格子定数・結晶構造の同一性判定・パラメトライゼーション(いわゆる数学のモジュライ空間)に関わる計算手法の高速化が必要とされ、厳密な数学の利用も検討されている。こういった問題に、格子基底簡約(Minkowski, Selling, Voronoi, Venkov, Ryskov C-typeなど)がどのように使えるかを解説する。
AIMRセミナーとFriday Tea Time
AIMRは融合研究推進のための取り組みに力を入れており、その一環としてAIMRセミナーとFriday Tea Timeを開催しています。
AIMRセミナーでは、AIMR所属の研究者やAIMRを訪問中の研究者に、材料科学から数学にいたる幅広い分野についてホットな話題を提供いただきます。自分の研究の枠を越えてお互いの研究を知ることで、その後のコミュニケーションや議論へ繋がることを狙いとしています。
毎週金曜日に開催するFriday Tea Timeでは、リラックスした雰囲気の中、研究者やスタッフの垣根なくAIMRのメンバーがコーヒーを片手に語り合います。何気ない会話から研究者同士の化学反応が生まれることが期待されます。
2024年からは、AIMRセミナーとFriday Tea Timeの相乗効果によって、活発な融合研究を推進していきます。
これまでのAIMRセミナー
第2回 | 2024年1月26日 | Michael I. Ojovan 教授(イギリス インペリアルカレッジロンドン) |
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第1回 | 2024年1月12日 | Dr. William Chuck Witt(イギリス ケンブリッジ大学) |
Tea Time Talk について
Friday Tea Timeの一環として、世界の著名研究者に講演をいただく「Tea Time Talk」を2023年まで開催し、下記の研究者に講演いただきました。
第43回 | 2023年7月21日 | Feral Temelli 教授(カナダ アルバータ大学) |
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第42回 | 2023年6月30日 | Douglas Brumley 講師(オーストラリア メルボルン大学) |
第41回 | 2023年3月28日 | 田中 求 教授(ドイツ ハイデルベルク大学・物理化学研究所) |
第40回 | 2022年11月10日 | 吉村 昌弘 教授(台湾 国立成功大学) |
第39回 | 2022年6月17日 | Rana Mohtadi 教授(アメリカ トヨタ北米先端研究所) |
第38回 | 2022年6月10日 | Michael Hirscher 教授(ドイツ マックス・プランク知的システム研究所) |
第37回 | 2022年6月3日 | 小田 玲子 教授(フランス フランス国立科学研究センター) |
第36回 | 2021年5月28日 | Magda Titirici 教授(イギリス インペリアルカレッジロンドン) |
第35回 | 2021年3月26日 | Yaroslav Blanter 教授(オランダ デルフト工科大学) |
第34回 | 2020年10月23日 | 塚越 一仁 博士(MANA / 国立研究開発法人物質・材料研究機構) |
第33回 | 2020年7月17日 | 玉田 薫 教授(先導物質化学研究所 / 九州大学) |
第32回 | 2020年1月17日 | 山内 美穂 教授(I2CNER / 九州大学) |
第31回 | 2020年1月17日 | Mickaël Lallart 教授(フランス INSA Lyon / リヨン大学) |
第30回 | 2019年10月25日 | Frédéric Gillot 准教授(フランス エコール・サントラル・ドゥ・リヨン) |
第29回 | 2019年7月12日 | Qian Niu 教授(アメリカ テキサス大学オースティン校) |
第28回 | 2019年5月17日 | Damien Fabrègue 教授(フランス INSA Lyon / ELyT MaX Lab at Tohoku University) |
第27回 | 2018年12月14日 | 求 幸年 教授(東京大学大学院工学系研究科物理工学専攻) |
第26回 | 2018年7月13日 | 小野 新平 博士(一般財団法人電力中央研究所) |
第25回 | 2018年5月11日 | Pierre-Antoine Geslin 博士(フランス Mateis lab, INSA Lyon/CNRS・ELyTMaXLab at Tohoku University・東北大学金属材料研究所) |
第24回 | 2018年4月27日 | 塚田 捷 特任教授(東北大学AIMR) |
第23回 | 2017年12月8日 | Jean-Yves Cavaillé 教授(フランス INSA Lyon / ELyT MaX Lab at Tohoku University) |
第22回 | 2017年7月28日 | Nicolas Mary 教授(フランス INSA Lyon / ELyT MaX Lab at Tohoku University) |
第21回 | 2017年7月21日 | Gael Sebald 教授(フランス NSA Lyon / ELyT MaX Lab at Tohoku University) |
第20回 | 2017年7月7日 | Arun Bansil 教授(アメリカ ノースイースタン大学) |
第19回 | 2017年6月30日 | 中西 毅 博士(産業技術総合研究所、産総研・東北大数理先端材料モデリングオープンイノベーションラボラトリ(MathAM-OIL)) |
第18回 | 2017年6月23日 | Denis Arčon 教授(Jožef Stefan Institute, Slovenia) |
第17回 | 2017年4月28日 | 平野 愛弓 教授(東北大学AIMR) |
第16回 | 2016年11月29日 | David Guy Austing 博士(カナダ カナダ国立研究機構) |
第15回 | 2016年9月30日 | C. Suryanarayana 教授(アメリカ セントラルフロリダ大学) |
第14回 | 2016年6月17日 | 福村 知昭 教授(東北大学AIMR) |
第13回 | 2016年5月13日 | Jean-Yves Cavaillé 教授(ELyT MaX(東北大学に設置のジョイントラボ), フランス リヨン大学) |
第12回 | 2015年6月26日 | B. Muralidharan 博士(インド インド工科大学ボンベイ) |
第11回 | 2014年6月27日 | Michael B. Santos 教授(アメリカ オクラホマ大学) |
第10回 | 2013年11月19日 | Pawel Hawrylak 博士(カナダ カナダ国立研究機構) |
第9回 | 2013年10月1日 | Yuan T. Lee 博士(台湾 台湾中央研究院・1986年ノーベル化学賞受賞者) |
第8回 | 2013年6月28日 | Bjorn Mysen 博士(アメリカ カーネギー研究所・地球物理学研究施設) |
第7回 | 2013年4月12日 | Yiming Li 教授(台湾 国立交通大学) |
第6回 | 2013年1月18日 | Tomasz Dietl 教授(ポーランド ポーランド科学アカデミー) |
第5回 | 2012年8月31日 | John H. Perepezko 教授(アメリカ ウィスコンシン大学マディソン校) |
第4回 | 2012年8月17日 | Alain Reza Yavari 教授(フランス グルノーブル工科大学) |
第3回 | 2012年8月10日 | Alan Lindsay Greer 教授(イギリス ケンブリッジ大学) |
第2回 | 2012年7月6日 | Winfried Teizer 教授(アメリカ テキサスA&M大学) |
第1回 | 2012年5月25日 | Thomas P. Russell 教授(アメリカ マサチューセッツ大学アマースト校) |
問い合わせ先
東北大学材料科学高等研究所(AIMR)
副研究支援部門長 赤木 和人
E-mail: | kazuto.akagi.b5@tohoku.ac.jp |
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