熱電変換材料: 多孔構造による熱電変換効率の向上

2021年01月25日

廃熱回収に最適な性能を兼ね備えた、ハニカム構造の熱電変換材料が実現された

シリカ(SiO2)の多孔構造(左下)を、725℃でマグネシウム蒸気処理することによって、高性能な熱電変換材料であるマグネシウムシリサイド(Mg2Si)の多孔構造(右上)へと変換できる(緑色の球は酸素原子、青色の球はケイ素原子、オレンジ色の球はマグネシウム原子を表す)。

参考文献1より許可を得て改変。Copyright (2020) American Chemical Society.

廃熱を吸収してそれを直接電気に変換できる超軽量材料が、東北大学材料科学高等研究所(AIMR)の研究者らによって開発された1。この材料を利用すれば、自動車や発電所のエネルギー効率を大幅に向上させられる可能性がある。

熱電変換材料の片側を加熱すると、生じた温度勾配によって電圧が発生する。こうした材料は、原理的には、多くの装置やデバイスから廃熱として失われる大量のエネルギーを回収するのに適している。AIMRの藪浩准教授は、「自動車のエンジンや発電所のタービンから放出される廃熱の量は莫大で、生じた熱エネルギーの最大60%が環境に放出されています」と言う。

これまでに多くの熱電変換材料が開発されてきたが、自動車やガスタービン、その他の工業プロセスからの廃熱流の温度に相当する、125~625℃の温度範囲において高効率で機能する普遍的な元素からなる熱電変換材料はほとんど存在しない。

だが、マグネシウムシリサイド(Mg2Si)は例外だ。「Mg2Siは、資源が豊富な元素で構成されていて、最適な動作温度が約425℃と産業廃熱の温度にほぼ完全に一致する、数少ない熱電変換材料の一つです」と藪准教授は説明する。

優れた熱電変換材料は、電気伝導率が高いだけでなく、低温側の温度を保って温度勾配を維持できるよう、熱伝導率が低くなければならない。

Mg2Siには、熱伝導率が高すぎて実用には向かないという欠点があることから、藪准教授らは熱伝導を抑制する方法の開発に取り組んできた。「多孔構造の導入は、熱伝導率を低減させる効果的な手法です。ところが、従来の方法で多孔質Mg2Siを作製すると、欠陥が形成されて電気伝導率も低下するという問題がありました」と藪准教授。

藪准教授の研究チームは今回、欠陥を形成させずに細孔を導入して、ハニカム構造のMg2Siを作製する方法を考案した。チームは以前の研究で、水滴を鋳型として細孔を形成させる方法でポリマーのハニカム構造を作製しており、この構造をシリカ(SiO2)でコーティングする方法も開発していた。今回の研究では、このSiO2でコーティングしたポリマーハニカム膜を、725℃以上の温度でMg蒸気処理することで、形状を保ったまま「Mg2Siハニカム」に変換できることが示されたのである(図参照)。

得られたMg2Siハニカムは、水に浮くほど軽かった。この性質は、自動車での廃熱回収のように軽さが重視される用途では特に有利となる。重要なのは、Mg2Siハニカムでは、バルクのMg2Siよりも熱伝導率が11%低減された上、電気伝導率は保持されていた点である。「非常に軽量で資源が豊富な材料からなり、高い熱電変換効率を示すMg2Siハニカムは、ほぼ理想的な熱電変換材料と言えるでしょう」と藪准教授は語る。

References

  1. Yabu, H., Matsuo, Y., Yamada, T., Maeda, H. & Matsui, J. Highly porous magnesium silicide honeycombs prepared by magnesium vapor annealing of silica-coated polymer honeycomb films toward ultralightweight thermoelectric materials. Chemistry of Materials 32, 10176–10183 (2020). | article

このリサーチハイライトは原著論文の著者の承認を得ており、記事中のすべての実験データは同著者から提供されたものです。