研究内容

 

原子分解能計測による原子構造決定と特性評価

材料内部の原子構造を観察する手法として、透過電子顕微鏡法(TEM)および球面収差補正技術を駆使した走査透過電子顕微鏡法(STEM)は大変有用です。現在では、原子カラム一個一個について、その位置や元素種の特定のみならず、局所的な電子状態の解析が可能です。本研究室では、最先端の高分解能電子顕微鏡法、走査透過型電子顕微鏡法、エネルギー分散型X線分光法(EDS)や電子エネルギー損失分光法(EELS)を駆使して、粒界・界面の原子構造および電子状態を精密に計測するとともに、第一原理計算などの理論計算を用いた解析を併用し、材料の機能発現メカニズムの解明と機能特性の予測を行っています。

 

結晶界面の普遍的な数学理論の構築

粒界・界面の安定原子構造を決定し、材料の力学的特性や機能特性との関係を記述する基本法則を解明することは、先端材料開発における非常に重要な課題とされてきました。原子分解能STEMや第一原理計算に代表される昨今の目覚ましい技術進展を適用しても、安定粒界の構造を決定するには多大なコストを要します。したがって、結晶界面に関する材料現象の本質を明らかにするためには、原子分解能STEMおよび理論計算と協同した純粋な数学的アプローチが重要です。特に特異な機能特性は、粒界・界面近傍に存在するナノスケールの空孔分布に起源があると考えられます。そのため、どのようなタイプの原子多面体が粒界近傍を充填しているのかを明らかにする必要があります。本研究室では粒界原子構造の解析を行い、傾角粒界の3次元多面体配列を明らかにしました。粒界近傍を充填する多面体は、母結晶由来と粒界構造由来の2種類の多面体に大別され、原子多面体の三次元配列は有理数の分布と一対一の関係があることが分かりました。このような原子多面体分布に関する系統的な理解に基づき、一般粒界の構造記述や機能特性の予測に発展させる研究を進めています。