地図を見て目的地への行き方を考えたり、軽量化と強度を両立するように形状を工夫したりするなど、我々が何かを理解したりデザインしたりする作業は、「つながり方」から情報を取り出す、「つながり方」を工夫するといった作業であることが少なくありません。物質材料の開発も同様で、原料やプロセス条件の無数の組み合わせの中から目的とする特性や性能を実現しようとする際に、観察画像やシミュレーションから得られた構造の情報(つながり方)を手がかりとしたいことがよくあります。

トポロジカルデータ解析(Topological Data Analysis:TDA)とは、トポロジーの視点(つながり方)からデータの特徴(かたち)を捉えて分類や定量化を行う数学的な解析手法です。近年ではパーシステントホモロジー(Persistent Homology)を活用した解析法という文脈で使われることが多くなっていますが、広義にはグラフ理論や結び目の理論といった幾何学的なアプローチを幅広く含みます。

深層学習を含む機械学習の手法の進化には目を見張るものがあり、積極的に活用しない手はありません。一方で、得られた結果の解釈が難しい、中身が見えないといった困難もあります。TDAは、従来の手法では整理が難しいデータや大規模で複雑なデータから記述子を生成するための道具であると同時に、これらの困難を緩和する手立てともなり得ます。

本コミュニティーでは、「パーシステントホモロジー」×「物質材料」を起点としてニーズを探りつつ、TDAの啓蒙、応用法の開拓、手法の探究、社会での実用化を目指した活動を展開します。

予定している活動の例:
・各種セミナーの開催
・TDAの活用事例の収集と提供
・「HomCloud」チュートリアルの開催
・関連する学会や団体との連携

また、TDAによる画像データなどの定量化は、品質検査やデータベース用のメタデータへの応用など、幅広く産業を支える技術となり得ます。本コミュニティーを母体として企業メンバーや有志を募り、その標準化や普及に取り組むコンソーシアムの設立も目指します。


本コミュニティは次の組織やプロジェクトの社会実装の場としても活動しています

・東北大学 WPI-AIMR(数理科学オープンイノベーションセンター)
・理化学研究所 AIPセンター(トポロジカルデータ解析チーム)
・科研費 新学術領域研究「次世代物質探索のための離散幾何学」
・SIP 戦略的イノベーション創造プログラム「統合型材料開発システムによるマテリアル革命」
・「富岳」成果創出加速プログラム 「電池課題」