寓意と隠喩

小説,詩,絵画などで,憂鬱,信仰,愛などの抽象的概念を具体的な事物あるいはそれらの相互関係により間接的に示唆し,読む人,見る人に理解させるというのが寓意である.一方,隠喩は暗喩とも呼ばれるようであるが,全体を全体で表象するような 修辞(=表現のシステム)である.具体的には王をライオンで表象するようなものである.ところで喩という漢字は,白川静「字通」によれば,その右部分はものを移す意があり,そこから「他に喩えて,ことを諭すこと」を喩という.それでは数理モデルというものは,隠喩に相当すると考えてよいだろうか.現象の時空間でのある側面を切り出している以上,隠喩にはなり得ないとも言えるが,本質的部分をうまく取り出していると見えるモデルもある.計算機の発達で,直喩に近いモデルも増えてきた.あるいは直接モデル化しているわけではないが,それこそ寓意的にうまく捉えているものもある.膨大なデータで良く訓練されたニューラルネットワークモデルはどのように考えれば良いだろうか.喩えの立場からモデルを眺めてみるのも面白い.

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