
従来、新らたな物性を発現させるために、様々な新材料が開発されてきました。金属、セラミクス、高分子を見てもわかりますが、電気を通す高分子や透明セラミクスといったものが新たなデバイスを生み出すことになります。20世紀は合成の時代と言われ、新たな物性を発現させる新物質の合成が重要でした。最近では、求められる物性・機能がさらに増え、複数の材料にまたがった機能を持った材料というのが求められるようになってきました。
それに対して、金属とセラミックス、あるいはプラスチックなどの特性を併せ持つような材料が求められるようになりました。たとえば、普通のセラミックスは落としたら割れてしまいますが、弾力性やプラスチックのような流動性があればよいのにといった具合です。もしも、そのような夢のフルイディックセラミクスができれば、自動車用や電子デバイス用に使われていたセラミクス部材の大きさや形状は大幅に変わるでしょう。形状や構造を制御できるようになれば、今までにない高機能な部品・電子材料ができますし、人工骨や人工筋肉といった医療用材料などへの利用など、幅広い分野への応用が期待できるのです。形状や構造を制御することで新たな機能を発現させることが重要となってきたわけです。そのためには、そのような構造を制御するためのプロセッシングが重要です。21世紀は、まさに、プロセッシングの時代といえるかと思います。
先ほど、フルイディックセラミクスという夢の材料について触れましたが、セラミクスと高分子といった、性質が全く異なる2つ以上の材料を混ぜるといっても、ただ混ぜるだけではなかなか混ざりません。高分子の性質をもつようなセラミクスを、サイズを制御しながら合成する必要があります。まさに、ナノ粒子の利用に関する課題は、新たな複合機能材料の創製という大きなニーズにおいても、同じ問題をはらんでいたわけです。私が重要だと思っているのは、このように、広い産業分野の情報を集約することで、そこに潜む共通の本質的課題を抽出できたことにあると思っています。