超臨界をとりまく世界の動向|阿尻研究室|東北大学 WPI-AIMR 原子分子材料科学高等研究機構ソフトマテリアルグループ多元物質科学研究所プロセスシステム工学研究部門 超臨界ナノ工学研究分野

超臨界を語る

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【Vol.06】超臨界をとりまく世界の動向

超臨界を語る|阿尻研究室1990年代、米国では、すでに説明したように、軍事産業や宇宙産業用途がらみで、超臨界水酸化の研究には大きな予算が付けられていましたから、大学および国の研究所では、基礎研究分野で多くの研究者が世界最先端の研究を進めていました。しかし、2000年を超えたあたりで、軍事利用や宇宙技術への利用のための研究費用が大幅に削減されると、研究者人口は大幅に減少しました。残った超臨界反応の研究者も、研究の中心を新材料開発の研究へとシフトしていきました。材料関係の研究分野には、超臨界抽出・分離の研究を行っていた研究者たちも、少しずつ携わるようになったようになってきたように思います。

ヨーロッパでは長年にわたって分離の研究や技術開発が着実に進められています。私の印象ですが、欧州、特にドイツでは、米国と異なり、予算と関係なく、じっくりと腰を据えて、基礎研究、基盤研究を長期間に渡って行う文化があるように思います。昔、このような古臭い基礎研究などで、華やかさにかけるなぁと思っていたものも、20年ぶりに行ってもまだ続けているわけです。そして、明らかにこれだけの時間をかけてやってきたことが大きな基礎となって、ゆるぎない技術の基盤となっていることがわかります。すでに述べましたが、一見華やかな研究とは全く違う研究スタンスに頭が下がる思いを持ったことがあります。

超臨界を語る|阿尻研究室ナノ粒子合成を可能とした超臨界反応研究は、25年前に東北大学から発信されましたが、今は、世界各国で進められています。現在では、日本よりも、むしろ中国や韓国などが強力な産学連携の下で、よりアクティブな研究開発が進められているようにすら感じます。東北大学発のナノ粒子の合成技術は、韓国がいち早く実用化に成功しました。自動車のバッテリーに使われるリチウムイオン電池用の材料が合成されています。英国でも様々なナノ材料開発を超臨界法でおこなう実用プロセスが開発されつつあります。