超臨界とは|阿尻研究室|東北大学 WPI-AIMR 原子分子材料科学高等研究機構ソフトマテリアルグループ多元物質科学研究所プロセスシステム工学研究部門 超臨界ナノ工学研究分野

超臨界を語る

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【Vol.01】超臨界とは

超臨界を語る|阿尻研究室気体を圧縮すると液体に、また液体を減圧すると気体になることも身近な現象として知られていますね。ここで、温度を上げると、気体を液化するのにはより高い圧力が必要となります。これも理解しやすい現象だと思います。この時、液体は、温度が高いので、構造が緩んでいますから、密度は低くなっています。つまり、気体の密度と液体の密度が近づくことになります。さらに温度を上げるとどうでしょうか。気体の密度と液体の密度はさらに近づくことになり、最後は同じになってします。この温度が臨界温度、その時の圧力が臨界圧力です。それ以上の温度とすると、気体を圧縮しても液体とならない高密度のガス状態となります。これが超臨界流体です。

超臨界を語る|阿尻研究室こういったことが分かる前は、気体には圧縮して液体になるものとならないものの2種類があるとされていました。水素、ヘリウムや窒素は圧縮しても液体にならないと思われており、永久ガスと呼ばれていた時代もありました。水素、ヘリウムや窒素の臨界点はとても低く、冷やす技術のない時代には液体にすることができなかったからです。もちろん、今は、液体窒素、ヘリウムはもちろん、水素ですら液化できることはご存じのとおりです。 もう少し分子運動論的に、簡単にお話しましょう。分子間引力(ポテンシャルエネルギーの深さ)は、分子によって決まります。温度を上げると、分子の運動エネルギーは大きくなります。ポテンシャルエネルギーの深さ以上の運動エネルギーが与えられれば、いくら分子間距離を短く(密度を高く)しても、分子は自由に動ける状態となります。

このような説明からもわかる通り、超臨界流体を一言で表すと、圧縮しても液体にならない高密度のガスと言ってよいでしょう。通常のガスと同様、粘性が低く、拡散しやすいのはもちろんですが、液体と同程度の高い密度を持つので、液体と同じ様にものを溶かす力(溶解力)があります。また、反応の平衡や速度の制御機能(溶媒効果)も持ちます。液体と気体の物性を同時に持つだけでなく、これらの特性を温度や圧力で容易に制御できるという点が、従来の気体、液体中での現象には見られなかった新たな特性といえます。