2019年度の研究実施内容
テーマA 病態メカニズムの数理モデル化と診断・治療に適した形状表現の数理モデル構築
間質性肺炎の診断に関わる気管支走行の自動抽出と評価に用いるアルゴリズムを完成させた。また、人工透析に関わる動静脈シャントの血流解析を新たに開始した(水藤グループ)。研究開始当初から続けている血流と血管の運動の連成解析に関しては、大動脈内の流れに左心室および心臓弁の挙動によって作られる流れがどのように影響しているのかを詳しく調べる成果があった(滝沢グループ)。
テーマB 医用画像のイメージングと解析処理による情報抽出に関する数理モデル構築
拡散MRIによる生体の微細構造の推定を目的とした生成型Q空間学習の研究が進展し、関連分野のトップカンファレンスで発表した。またその成果として拡散MRI解析ソフトウェア(diMaRIA)を公開した。また、適応的ネットワーク設計の理論(フィザルムソルバ)を用いた神経線維の追跡に関して、前年度までに開発したソフトウェアの改良ならびに各種の実験を行なった(増谷グループ)。
テーマC 統計的手法を用いた診断アルゴリズムの抽出及び臨床現場に適した統計モデルの構築
臨床データに数理モデル解析を適用する際には、医用データの管理や医療施設間の移動について慎重な管理が必要である。日常的な医療活動に影響を与えない形で適切にデータの取り出しを行うためのシステムを構築できたことは2019年度の大きな成果である。次年度以降にこのシステムを用いて乳腺画像に対する時系列変化数理モデリングに対する深層学習を適用した研究を推進していく(植田グループ)。
テーマD 臨床現場に適用する種々の数理モデルに対する数学的基盤の確立
血流解析等でしばしば用いられるIso-geometric Analysis (IGA)の数学的正当性を保証する上において重要な役割を果たす楕円型射影作用素についての研究を進めた。また、心血管系の血流シミュレーションでは、3次元の詳細な数理モデルの他に1次元血流モデルがよく用いられるが、2019年度は空間1次元の場合に問題を限定してT. Kato理論の離散版の構築に成功した。ここでは離散偏導関数法で用いられる様々な恒等式や不等式を活用することができ、離散偏導関数法の新たな応用先を見出すことができた(齊藤グループ)。