Research (Now Only in Japanese)

 

○ 新規材料合成 

  Synthesis

● 機能性両親媒性ポリマーの合成 

  Synthesis of Functional Amphiphilic Polymers

親水性と疎水性を併せ持つ両親媒性ポリマーは、構成するモノマーに機能性官能基を導入することで気-液・固-液・液-液界面で多様な機能を発現させることができます。例えば疎水基に光異性化する分子や温度応答性官能基を導入することで、刺激に応じて表面の濡れ性を変えることができます。また、親水基に接着性官能基であるカテコール基を導入することで、多様な無機ナノ粒子表面を疎水化し、疎水溶媒中に安定に分散させたり、ナノ粒子合成の場を形成させたりすることができます。また、両親媒性ポリマーは下記に述べるハニカムフィルムの形成に非常に重要な役割を果たしており、ハニカムフィルムの構造制御や表面の機能化に役立っています。

最新の重合技術を駆使して、これら新規の機能性両親媒性ランダム・ブロックコポリマーを合成しています。

● 機能性ナノ材料の合成 

  Synthesis of Nanomaterials

ナノ粒子やナノクラスターなどのナノ材料は、サイズと構成元素に依存した多様な機能を発現します。例えば、化合物半導体ナノ粒子は量子効果によりサイズに依存した発光を示します。また、金ナノ粒子はサイズや形状に依存して特徴的なプラズモン吸収を持ちます。さらに貴金属ナノクラスターは特徴的な発光や触媒作用を持つことが知られています。

液相合成法を用いて、多様なナノ材料(貴金属や化合物半導体、酸化物)の合成を行っています。また、ごく最近UV光を用いたミセル中での光反応により、機能性顔料であるフタロシアニンナノ結晶を低温で合成できることを発見しました。本手法を多様な複素環系顔料の合成に展開しています。


○ 新規加工プロセスの開発 

  New Fabrication Processes

● 水滴を鋳型としたハニカムフィルムの作製

  Fabrication of Honeycomb Films by Breath Figure Technique

冬の寒い日に窓ガラスに息を吹きかけると、呼気の水蒸気が結露して窓ガラスが曇ります。これを英語で”Breath Figure”と言います。疎水性のポリマー溶液を高湿度雰囲気下でキャスト製膜すると、溶媒が蒸発する際の気化熱により、溶液表面が冷却され、空気中からサブミクロン~ミクロンサイズの水滴が溶液表面に結露します。結露した水滴が鋳型となり、ハニカム状の多孔質膜が形成されます。前出の両親媒性ポリマーは結露した水滴を安定化するのに役立っています。

我々はこれをハニカムフィルムと呼び、様々な二次加工プロセスを併用することで、細胞培養基材や分離膜、多孔質電極や超撥水基板など、様々な応用に展開しています。

● 自己組織化析出法によるポリマー微粒子の創製

  Preparation of Polymer Particles by Self ORganized Precipitation

ポリマーの溶液に貧溶媒を加え、良溶媒を蒸発除去することで、溶解度を下げ、貧溶媒中に析出させることで微粒子を得る手法を独自に考案しました。我々は本手法を「自己組織化析出(Self-ORganized Precipitation, SORP)法」と名付け、多様なポリマー材料の微粒子化に成功しています。

本手法は溶媒に溶けさえすれば、多様なポリマーを数十nm~数ミクロン程度の粒径に微粒子化できるため、従来微粒子化が困難であったポリマーブレンドやブロック共重合体などから微粒子の作製を行い、これらの相分離構造を制御することにより、ナノ構造を持つ微粒子材料の開発を行っています。

さらに、合成した機能性ポリマーやナノ材料と組み合わせることで、ナノ構造と機能材料の機能性のシナジーにより、ユニークな機能を持った微粒子材料が次々と見いだされてきています。

● スライド法による連続ディウェッティングパターンの形成

  Continuous Dewetting Pattern Formation by Sliding Method

二枚のスライドガラスを平行に設置し、その間隙にポリマー溶液を満たした後、一方をスライドさせることで、ガラス表面にポリマーを塗工することができます。その際、ポリマー濃度を低くすると、基板に溶液がはじかれ(脱濡れ・Dewetting)、ドット、ライン、格子などの多様なパターンが形成されます。

本手法を導電性ポリマーや導電性ナノ粒子に適用することで、異方導電膜や透明電極への展開を行っています。


○ バイオミメティックマテリアルデザイン

  Biomimetic Material Design

● バイオミメティック撥液性表面

  Biomimetic Liquid-Repellent Surfaces

ハスの葉は表面のワックスが階層的な凹凸を持つことで、撥水性をエンハンスさせ、高い撥水性(超撥水表面)を得ています。また、魚の鱗は反対に、親水性が強調され、高い撥油性や撥気泡性を発現しています。また、ウツボカズラの様な食虫植物の表面は凹凸構造表面に水を担持することで、油分を多く含む虫の足を滑らせ、捕虫しています。

これら生物に見られる撥液性表面を人工材料で実現するには、望みの表面物性を持つ材料から、如何に微細な凹凸構造を制御して大面積に作製するか、ということが重要です。我々はハニカムフィルムや、ハニカムフィルムを二次加工して得られる剣山構造などを利用して、超撥水表面(Superhydrophobic Surface) や超親水性表面(Superhydrophilic Surface)、そして水や油を流し落とすことのできる超撥液性表面(Omniphobic Surface)の創製に成功しています。また、表面パターニングやフィルムの延伸などを組み合わせることで、液滴の流れを自在に制御出来ることを明らかにしてきました。

このようなバイオミメティックな「液滴操作」表面は、次世代のマイクロ流体デバイスとして期待されています。

● バイオミメティック多層膜による構造色フィルム

  Biomimetic Multilayered Films Having Structural Colors

タマムシなどの昆虫は美しい反射色を示します。これは、翅の表面に屈折率の異なる10~20層程度の多層膜構造が形成されていることに由来します。しかし、生物が持つ有機材料では、タマムシの様な鮮やかな反射色を示すには、理論計算からは大きな屈折率差と100層近い積層構造が必要であり、このような高い選択反射を示す理由は必ずしも明らかではありませんでした。

我々は屈折率の高い層に豊富に存在するメラニン色素の光学性能に着目し、着色レイヤーと無色のレイヤーを積層することで、少ない積層数で明瞭な構造色を得ることが出来ることを見いだしました。

また、ミヤマハンミョウは構造色で美しい色を持つハンミョウの一種であるにも関わらず、褐色です。これは、体の表面に数十~数百ミクロンの凹凸を作ることにより、色の三原色(赤・青・緑)の反射を混合することで褐色の色を出していることがわかっています。我々はこの表面構造をまねて、角度依存性の少ない構造色フィルムの作製に成功しています。

● バイオミメティック接着材料

  Biomimetic Adhesives

ムール貝(ムラサキイガイ)に含まれる接着タンパクは、海水中でも岸壁などの多様な材料表面に接着する機能を持っています。これは、接着タンパク内に含まれるカテコール基の作用であることが報告されています。我々はカテコール基を組み込んだ様々なポリマー材料を作製し、今まで接着が困難だった表面への材料の接着や表面改質を行っています。

両親媒性ポリマーの項で述べたナノ粒子の表面修飾はその一例ですが、その他にもナノインプリントの界面改質やハイドロゲルの接着など、独自のポリマー材料を用いて応用展開しています。


○ その他

  Others

その他にも、国内外の大学・企業研究者と共同で、細胞の接着・増殖・分化を制御する細胞培養基板や応力に応じて発光色の変化するメカノクロミック材料、ナノパターン形成手法、低摩擦材料、イオン伝導材料、メタマテリアルなどへの応用を目指した材料・プロセス開発を行っています。