2017年度第1回 AIMR数学連携グループセミナー

 

日時:2017年5月19日(金)10:00~11:00
場所:AIMR本館 3C

 

Speaker:杉谷 宜紀

Title:ストークス方程式に対するインターフェースおよび非線形境界値問題    の数値解


Abstract:

流体の数値シミュレーションは理工医学の分野で広く応用されており, 基本的には Navier-Stokes 方程式の初期値境界値問題が考えられる事になるが, 現実の複雑な現象を数理モデル化する要求に応じて, 非標準的な境界条件や特異な外力を持つ数理モデルが採用されている. 例えば, 胸部大動脈血流のシミュレーションにおいては人工的に導入した流出側境界で, 様々な 要求に応じた境界条件が必要になる. また, 心臓弁と血流との相互作用を数理モデル化する埋 め込み境界法においては, 弁を血中に配置された薄膜 (インターフェース) とみなし, そこから 結果としてデルタ関数を用いた特異な外力を持つ方程式を解く事になる. 本講演では, そのよ うな数理モデルを数値的に取り扱う為に, Stokes 方程式を対象に片側境界条件と埋め込み境界 法に対する有限要素法の研究を紹介する.

最初に次のような Stokes 方程式に対する非線形境界値問題を考察する:

 

  −ν∆u +∇p = f, ∇·u = 0 in Ω, (1a)

   u = b on S1, (1b)

  u = 0 on S2, (1c)

  un ≥ 0, τn(u,p) ≥ 0, unτn(u,p) = 0 on Γ, (1d)

   τT(u) = 0 on Γ. (1e)

 

ここで, Ω は ∂Ω = S1 ∪S2 ∪Γ をみたす Rd(d = 2,3) 内の Lipschitz または多角形領域とし, 境界 S1 は流入境界, S2 は血管壁, S3 は流出境界をそれぞれ表す. u,p は流速と圧力を表す未 知関数とし, ν,f,b はそれぞれ動粘性係数, 外力, inflow を表し既知とする. τ(u,p) は流体の応 力であり, 添字 n,T よって法線成分, 接線成分を表す. (1) は胸部大動脈の血流シミュレーショ ンに対する新しいモデル問題に基づいており, 周, 齊藤 [5] によって提案された片側境界条件 (1d) を流出境界 Γ 上に課した Stokes 方程式である. (1d) は流出境界上で逆流の可能性を排除 する境界条件として提案され, 非定常問題に対してエネルギー不等式を担保する為に安定的な 数値シミュレーションが期待される. 講演では (1) の解の存在と一意性を証明し, 有限要素法 による誤差解析を紹介する. その際に数値的な扱いが難しい不等式条件 (1d) は処罰法によっ て近似される事になり, 最終的な誤差解析は各パラメータを適当に選べば従来の有限要素法と 同じ 1 次精度で与えられる. 結果を数値実験によって検証する.

 次に埋め込み境界法に対する有限要素法の研究について紹介する. 埋め込み境界法とは C. S. Peskin [2] によって提案された流体中に埋め込まれた薄い弾性膜 Γ と流体との相互作用からなる流体構造連成問題を解く為の手法であり, その特徴は膜の効果を Dirac デルタ関数 δ を用いて流体全領域へ働く外力のように表現する点にある. 講演ではStokes方程式に対する 埋め込み境界法

 

 −ν∆u +∇p = f in Ω, ∇·u = 0 in Ω, u = 0 on ∂Ω, (2a)

 f(x) =∫Θ F(θ)δ(x−X(θ)) dθ (2b)

 

を扱う. ここでX,F はそれぞれΓ = {X(θ) | θ ∈Rn−1}としてLagrange座標系θ を導入した 際の位置, および弾性力密度関数を表す. (2) の数値解析は近似デルタ関数 δε の導入による特 異な外力 f の正則化と数値解法による離散化に分けられる. 結果として, 埋め込み境界法の有 限要素法の誤差解析は, 正則化誤差評価の影響で従来の H1×L2 誤差評価ではなく W1,q ×Lq 誤差評価 (1 < q < d/d−1) の範囲で与えられる事を紹介する.

 最後に埋め込み境界法と本質的に同値である次のStokesインターフェース問題を考察する:

 

 −ν∆ui +∇pi = 0, ∇·ui = 0 in Ωi, (3a)

 ui = 0 on ∂Ωi \Γ (i = 0,1), (3b)

 u0 = u1, τ0 + τ1 = g on Γ, (3c)

 

ここで Γ はインターフェースであり各領域 Ω0, Ω1 と接し, インターフェース条件 (3c) によっ て応力にジャンプ g が課されている. (3c) は埋め込み境界法と同様に, 藤田ら [1] によると, 特 性関数 χ を使って Ω = Ω0 ∪Ω1 ∪Γ 全体へ働く外力のように拡張され, (3) の再定式化

 

 −ν∆u +∇p = f in Ω, ∇·u = 0 in Ω, u = 0 on ∂Ω, (4a)

 f(x) = ˜ g(∇χ·˜ n). (4b)

 

が与えられる. ここで χ は Ω0 に対する特性関数, n は Γ 上の法線ベクトルで, ˜ g, ˜ n は Γ 上の関 数を Ω 上への滑らかな拡張を表す. 問題 (2) と (4) は g と F がある関係を満たせば同値となる が, デルタ関数による定式化 (4) に比べて特性関数 χ による定式化は解析や実装が容易となる 利点がある. 実際, (4) の有限要素法に対しては特性関数の正則化誤差の影響で収束速度のロ スはあるものの, 従来の有限要素法と同じく H1 ×L2 誤差評価の形で 1/2 次精度で得られる.


Reference:

[1] H. Fujita, H. Kawahara, and H. Kawarada: Distribution theoretic approach to fictitious domain method for Neumann problems. East-West J. Numer. Math., 3(2), 111-126, 1995.
[2] C. S. Peskin: The immersed boundary method. Acta Numer. 11, 479-517, 2002.
[3] N. Saito and Y. Sugitani: Convergence of the immersed-boundary finite-element method for the Stokes problem, arXiv:1611.07172.
[4] N. Saito, Y. Sugitani, G. Zhou: Unilateral problem for the Stokes equations: the wellposedness and finite element approximation, Appl. Numer. Math. 105, 124-147, 2016.
[5] G. Zhou and N. Saito: The navierstokes equations under a unilateral boundary condition of signorini’s type. Journal of Mathematical Fluid Mechanics, 1-30, 2015.

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