「スピン量子整流・スピンゼーベックアソシエーション」を設立

2016年05月12日

東北大学原子分子材料科学高等研究機構(WPI-AIMR)
東北大学金属材料研究所(IMR)

 

東北大学原子分子材料科学高等研究機構(WPI-AIMR)/金属材料研究所(IMR)の齊藤英治教授らは、スピン量子整流、特に次世代の熱電変換技術として期待されているスピンゼーベック効果(Spin Seebeck Effect)に関し、大学等公的研究機関と産業界で情報共有を行い、今後の技術開発の方向性について検討することを目的として、「スピン量子整流・スピンゼーベックアソシエーション」を設立しました。
2008年に齊藤研究室(当時:慶應義塾大学)で初めて観測されたスピンゼーベック効果は、磁性体の両端に温度差を付けるという簡便な方法で、磁気の流れ「スピン流」を作り出せることから、新しいエネルギー技術として注目されております。
この度の設立に際し、4月20日に初会合を東北大学東京分室で開催し、研究開発職の方を中心に大学等公的研究機関5機関、企業7社の参加がありました。 初会合では、内田健一准教授(金属材料研究所・齊藤研究室所属)よりスピンゼーベック効果の発見から最新の研究動向について報告があり、企業研究者と実用化に向けた課題や使用用途について活発な意見交換が行われました。
本アソシエーションでは、今後、定期的に会合を開催し、大学等公的研究機関からシーズを提供し、産業界のニーズを掘り起こし、産業応用可能な使用用途を見定め、プロトタイプの作製を通じて、新たな革新的デバイスの開発に貢献していきます。

スピン量子整流・スピンゼーベックアソシエーションのウェブサイト
http://spincurrent.jp/sqr-sse/ (新しいタブで開きます)

設立の背景

温度勾配を利用してスピン流を生成するスピンゼーベック効果は、スピン流を電圧に変換する逆スピンホール効果の発見と相まって新たな熱電変換技術として期待されています。 スピンゼーベック素子は、強磁性体と常磁性体の二層膜だけで構成されるシンプルな構造であり、そのシンプルな構造ゆえに大面積化、フレキシブル化、低コスト化など従来の熱電素子にはない高いポテンシャルを有しております。

news_160512.jpgスピンゼーベック効果の模式図

現状のスピンゼーベック素子の熱電変換効率は、通常のゼーベック素子よりはるかに低いことが課題であり、近年、素子を多層膜にする方法や、金属薄膜に従来使用されていた白金に代えてコバルト合金を使用することなどにより、出力性能の飛躍的向上に繋がる要素技術を開発してきました。塗布技術の応用により、素子の大面積化、フレキシブル化も実証されています。スピンゼーベック素子の効率の定式化も行われ、今後の開発の方向性を示すことも以前と比べて容易になりました。 8年前に発見されたスピンゼーベック効果は、物理的起源の理解と併せて、世界的な省エネルギー技術、エネルギーハーベスティング技術 i 需要の高まりを受けて、本格的に実用化に取り組むフェーズを迎えています。

今後の課題と展望

上述のとおり、スピンゼーベック効果については、理論、実験の両フェーズにおいて格段に進歩しておりますが、実用化に向けては、①更なる物質探索(磁性絶縁体層と導電体層の最適な組み合わせの探求)、②スピンゼーベック素子の最適設計と出力向上、③スピンゼーベック素子の特性を活かした使用用途の検討、④実際の使用形態を考慮した素子設計を推し進める必要があります。今後、本アソシエーションを通じて、大学等公的研究機関と産業界が手を取り合って、一つ一つ課題を解決していきたいと考えております。

用語解説

i エネルギーハーベスティング技術
身の周りの環境から微小なエネルギーを収穫して電力に変換する技術の総称。環境発電とも呼ばれる。光・熱・振動・電磁波などのエネルギー源に対するさまざまな発電方式が提案、検証されている。

問い合わせ先

東北大学 原子分子材料科学高等研究機構(WPI-AIMR)
ERATO齊藤スピン量子整流プロジェクトヘッドクオーター

TEL : 022-217-6238
E-mail : sqr-erato@wpi-aimr.tohoku.ac.jp