あ行

アモルファス合金
一般的な金属や合金では原子が周期的に配列した結晶構造を持っています。一方、これらの金属や合金も高温では液体であり、その原子配列はランダム構造を有しています。この高温の液体状態から急速に冷却すると結晶化することなくランダム構造を保ったまま凝固する固体があり、このような合金をアモルファス(非晶質)合金と呼びます。また、比熱実験で昇温中にガラス遷移現象が明瞭に観察されるものを金属ガラスと呼んで区別することもあります。
アモルファス相
周期的な(繰り返しの)原子配列を持つ結晶相とは異なり、原子配列がランダムな相のことをさします。
アンペロメトリー法
電極に一定電位を印加した状態で、流れる電流を測る電気化学測定法。電流は電極上で分子が酸化/還元することにより発生します。電流の大きさと酸化還元分子の濃度は比例するので、定量分析に利用することができます。
エピタキシャル成長
エピタキシャル成長(Epitaxial Growth)とは、薄膜結晶成長技術のひとつです。基板となる結晶の上に結晶成長を行い、下地の基板の結晶面にそろえて配列する成長の様式です。基板と薄膜が同じ物質である場合をホモエピタキシャル、異なる物質である場合をヘテロエピタキシャルと呼びます。結晶成長の方法として分子線エピタキシー法や有機金属気相成長法、液相エピタキシー法などがあります。エピタキシャル成長が起こるには格子定数のほぼ等しい結晶を選ぶ必要があり、温度による膨張係数の近い物でなくてはなりません。
応力‐歪み曲線
物質に外部から力を加えた際、それに抵抗する力(応力)が物質の内部に生じるとともに、歪みが生じます。この応力と歪みの関係を示した曲線のことです。

か行

界面相
多結晶材料は多くの結晶粒から成っていますが、それらの間の狭い隙間に形成される相(ある構造を持った領域)のこと。多結晶材料ではこの界面相の構造が機械物性を左右することが多いです。
ガスアトマイズ法
金属や合金の溶湯を細かく粉末化する工業的な製造方法。溶融温度以上に加熱された金属や合金の溶湯に対して、その溶湯流の周囲に配置した多数個のノズルから超音速のガスジェットを噴出させて、その衝撃波で溶湯流を粉砕することにより液滴が生成されます。こうしてできた液滴は落下しながら凝固して粉末となります。溶湯の表面張力、粘性、ガスジェット速度により得られる粉末サイズや形状は異なりますが、粒子間の組成差はきわめて小さく、このようにして作製された大量の粉体を、プレス成形や焼結することにより複雑な形状の部品を製造することが広く行われています。
過冷却
液体や気体を本来ならば相転移が起こるはずの温度以下に冷却しても、その相のまま留まっている状態。溶液が本来なら溶質の析出が始まる温度以下に冷却されても、なお全体が溶液のままに留まっていること場合を言います。水をゆっくりと冷却すると0℃でも凍らない場合があり、この状態を過冷却と呼びます。
球面収差補正装置
近年開発された補正装置によりレンズの球面収差をなくすことが可能となり、ビームを非常に小さい領域に集めることができるようになりました。その結果として、高分解能の電子顕微鏡像を得ることが可能となっています。
くし型電極
微細加工技術を用いて作製した配列電極の1つ。非常に細い幅のバンド型の電極が近接して配置されており、レドックスサイクルを効率よく誘導する事が可能です。
グラファイト層間電子
グラファイト結晶中の層と層の間に分布していて、ほぼ自由に動く事ができる電子のことです。グラファイト層間化合物の超電導発現には、この層間電子が密接に関係していると考えられています。
原子間力顕微鏡
カンチレバーと呼ばれる非常に尖った針(プローブ)を用いて、試料とプローブの原子間にはたらく力を検出して、試料の表面形状を取得します。
高角度散乱暗視野走査透過電子顕微鏡法(HAADEF-STEM)
走査透過電子顕微鏡法のうち、格子振動による熱散漫散乱によって高角度に非弾性散乱された電子を円環状の検出器で受け、この電子の積分強度をプローブ位置の関数として測定し、その強度を像として表示する手法です。
光電子分光
結晶の表面に紫外線を照射すると、外部光電効果によって物質中の電子が外部に放出されます。光電子分光は、この光電子のエネルギーや運動量などを測定することで、物質中での電子の状態、つまり物質の電子状態を観測する実験手法です。最近その分解能が急速に向上し、現在では超伝導になっている電子も観測できるようになりました。

さ行

磁気抵抗メモリ(MRAM)
磁気抵抗メモリ(MRAM)電子のスピンをメモリ素子として利用する新しい技術で、コンピューターの情報を記憶するためにスピンの磁化状態を利用します。スピンの方向を制御することで素子の抵抗値を変化させ、抵抗値の大小をデジタル信号の「0」と「1」に対応させます。MRAMでは、スピンの情報は不揮発性であるため、コンピューターの電源を切っても記憶情報が保存されます。そのため、待機電力が大幅に節約され、省エネルギー化が達成されます。
助触媒
触媒に少量加えることによって性能を向上させる物質。助触媒の役割は、活性サイトとして働いたり、電荷の蓄積により多電子反応を促進したり、電荷分離を促進するなど様々です。
靱性(じんせい)
物質の粘り強さを表すもので、クラック(欠陥)の進展に対する抵抗の大きさのことです。
スピン
電子が持つ、自転に由来した磁石の性質のことです。自転軸の方向に対して、上向きと下向きの2種類の状態があります。この自転軸は物質中の電磁気相互作用によって、様々な方向を向きます。通常の金属や半導体では、同じ数の上向きスピンと下向きスピンの電子が存在し互いにキャンセルしていますが、強磁性体(磁石)では片方の向きのスピンの電子の数が多くなるため、強い磁化が発生します。
スピン軌道相互作用
電子の軌道角運動量(公転)とスピン(自転)間に働く力のことで、相対論効果を考慮することで導出されます。電子は電荷を持っているので、原子核の周りを軌道(公転)運動すると電流が流れるため、磁場が発生します。一方で、電子はスピンも持っているので、スピンの上向き、下向きという磁石の性質と軌道運動による磁場との間で相互作用が働きます。スピン軌道相互作用はどんな物質にも存在しますが、重い原子ほどその効果が顕著に現れます。次世代スピントロニクスでは、このスピン軌道相互作用を利用した技術の開発が期待されています。
スピントロニクス
電子の磁気的性質であるスピンを利用して動作する全く新しい電子素子(トランジスタやダイオードなど)を研究開発する分野のことです。電子スピンの上向き/下向き状態を、電気信号の「0」と「1」に置き換えて信号処理を行います。電子スピンは応答が早く、熱エネルギーの発生も非常に少ないので、これを利用したスピントロニクス素子は、超高速、超低消費電力の次世代電子素子の最有力候補とされています。
スピン分解光電子分光法
物質表面に高輝度紫外線を照射して、外部光電効果により結晶外に放出された電子のエネルギー、運動量、スピンを同時に測定する実験手法です。この方法により、物質中の電子のスピンの向きや大きさが、電子のエネルギーや運動量とどのような関係にあるかを、直接的に決定することができます。これまで電子のスピン検出の効率が著しく低かったため、電子スピン状態を高い精度で決定する事が困難でしたが、様々な工夫と改良を加えて、東北大学において、世界最高の分解能を持つ「超高分解能スピン分解光電子分光装置」の開発に成功しました。
スーパーコンピューター
一般的なコンピューターより極めて高速なコンピューターで大規模な原子構造モデルの数値計算やシミュレーションが可能です。気象予測でも使われています。
走査型電気化学顕微鏡(SECM)
試料表面の電気化学反応種の濃度分布を、微小電極により酸化/還元し、電流値として2次元イメージングします。金属の触媒能や腐食プロセスの評価や、細胞の呼吸量の評価に用いられます。特に、無侵襲的に測定可能であるため、初期胚の呼吸量評価など生殖医療に応用されています。
走査型トンネル顕微鏡(STM)
先の鋭い探針(プローブ)を試料表面に接近させ、プローブと試料表面間に電圧をかけると、両者間にトンネル電流が流れます。この微少なトンネル電流の空間分布を観測する事で、表面形状や局所電子状態を観測する実験手法です。
塑性(そせい)
物質に力を加えて変形させたとき、力を除いても変形したままで元に戻らない性質を塑性と呼びます。

た行

チタン酸ランタン
チタンとランタンと酸素の化合物、化学式はLaTiOx(X:酸素組成)。リチウムを添加したものはリチウム電池用材料(電解質)として利用されます。
チップデバイス
数cm角のガラスやプラスチップなどの基板上に、センサなどが配置されたデバイスのことです。
中性粒子ビーム
プラズマ中に存在する正イオンあるいは負イオンは、電界により加速されると、原子分子、電子、壁などとの衝突で電荷交換して中性化されます。この時、運動エネルギーは保存され、方向性を持った中性粒子ビームを生成します。寒川教授はフッ素・塩素負イオンを直流電圧により加速することで電荷放出を促し、世界で初めて超高効率・低エネルギー高密度中性粒子ビームを形成しました。この中性粒子ビームでは、プラズマからの電荷や紫外線が一切基板に到達しないので、プラズマダメージは完全に抑制されます。
超高分解能走査透過電子顕微鏡
0.1ナノメートル(1億分の1センチメートル)程度まで細く絞った電子線を試料上で走査し、試料により透過された電子線の強度で試料中の原子を直接観察する装置です。
電気化学測定
測定物質を電極上で反応させる事で、測定物質の量などを計測する測定法。市販の血糖値計には、電気化学測定法が用いられています。
電子エネルギー損失分光器
電子線が試料を透過する際に原子との相互作用によって失うエネルギーを測定することによって、物質の構成原子やその化学状態を分析する装置です。

な行

ナノワイヤー
1ナノメートルは1 / 10億メートル。厳密な定義はありませんが、おおよそ数ナノメートルから1マイクロメートル(=1000ナノメートル)までの直径を持つ細線構造をナノワイヤーと呼んでいます。様々な種類のナノワイヤーが発見、開発されており、金属(金、銀、ニッケル、パラジウムなど)、半導体(シリコン、CdS、ZnO、GaN、ゲルマニウムなど)のナノワイヤーがあり、カーボンナノチューブや高分子ナノファイバーなども盛んに研究が進められています。
軟磁性(なんじせい)
小さな磁場で容易に磁化の方向がそろう磁性体。残留磁化がゼロになる外部磁場の大きさを保磁力と呼び、アモルファス合金はランダムな原子配列を持つ事から結晶磁気異方性が見られず、一般的に保磁力は小さく、透磁率が大きくなります。

は行

胚性幹細胞(ES細胞)
動物の発生初期段階である胚盤胞期のから作られた幹細胞株のこと。すべての組織に分化する分化多能性を持つため、様々な応用が期待されています。
バイオセンサ
分子認識素子として生体起源の物質を用いた化学センサ。例えば、抗原と抗体の特異的な結合を利用したイムノセンサや相補型DNA同士が結合することを利用したDNAセンサなどがあります。
バイオテンプレート
生体超分子を用いて無機材料を配置したり合成する手法。
微細加工技術
集積化回路を作製する際に基板上に微小な電極などを配置する技術。近年では、バイオテクノロジーの分野にも応用されている。
不均一系(固体)触媒
触媒(しょくばい)とは、特定の化学反応の反応速度を速める物質で、固体のまま直接用いることができる触媒を、不均一系触媒という。
プラズマダメージ
半導体デバイス製造工程においてプラズマプロセスにより入るダメージが大きな問題となっています。ダメージには、(1)物理的なダメージ、(2)電荷蓄積によるダメージ、(3)放射光によるダメージ、の3種類があります。物理的ダメージは基板に入射するエネルギーを持ったイオンの衝撃により基板に欠陥などのダメージが入ることをいいます。電荷蓄積によるダメージはプラズマから基板に入射する電荷(正イオン、電子)が絶縁膜上に蓄積することで、MOSトランジスタにとって極めて重要であるゲート絶縁膜などを絶縁破壊することをいいます。放射光によるダメージは、プラズマから基板に入射する紫外光やX線のような波長の短い放射光が基板に堆積されているシリコン酸化膜注にホール・電子対を生成し、絶縁性を劣化させることをいいます。

ら行

ラシュバ効果
表面や半導体接合面などの2次元系に出現する現象で、この効果の影響を受けた電子は、運動方向に対して2次元面で垂直なスピンの向きを持つようになります。通常のラシュバ効果では、上向きと下向きのスピンが同じ数だけ存在するため、物質全体のスピンの総和はゼロですが、電場をかけることである特定の方向を向いたスピンの電子数が大きくなるため、スピン流が流れます。このようなスピンの振る舞いを解明しスピンを制御することができれば、新しい量子現象やスピントロニクス素子開発への可能性が広がるとして、国内外で精力的な研究が行われています。
量子効果
量子サイズ効果やトンネル効果などがあり、いずれもナノメートルオーダーの構造で発現します。ナノ微粒子の直径を電子のド・ブロイ波長(数nm-20nm)程度まで小さくすると、電子はその領域に閉じこめられ、とびとびのエネルギー準位をとります。さらに電子の運動の自由度が極端に制限されるために、その運動エネルギーは増加します。従って、粒子径が小さくなるにつれてバンドギャップエネルギーが増加します。この現象を量子サイズ効果と呼びます。この量子サイズ効果により、半導体ナノ結晶では光の吸収・発光波長を粒子径により制御することができます。一方、トンネル効果とは、微小な構造において、エネルギー的に通常は超えることのできない領域(ポテンシャル障壁)を粒子が一定の確率で通り抜けてしまう現象のことをいいます。例えば、2種類の金属や半導体の間に薄い絶縁物の層(障壁)を挟み、両端に電圧を印加する時、絶縁層の厚さが極めて薄く、ナノメートル(nm)の桁になると、トンネル効果により電流が流れるようになります。
量子ドット
主に半導体において、電子の持つド・ブロイ波長(数nm-20nm)程度の大きさの粒状の構造を作ると、電子はその領域に閉じこめられます。閉じ込め方向を1次元にしたものを量子井戸構造、2次元のものを量子細線、そして3次元全ての方向から閉じ込めたものを、量子ドットと呼びます。量子ドットは、その特異な電気的性質により、単電子トランジスタ、量子テレポーテーション、量子コンピュータ-などへの応用が期待されています。また、大きさを変えることでバンドギャップエネルギーが制御でき、光の吸収や発光の波長を変化させることができるため、量子ドット太陽電池や量子ドットレーザーへの応用も期待されています。
レドックスサイクル
電気化学測定におけるレドックスサイクルとは、測定物質に酸化反応と還元反応を次々に引き起こさせ、電極上で反応する測定物質の量を増やすことで、得られるシグナルが増幅される現象のことです。