研究支援フォーカス
世界レベルの研究を全面的に支援する

2013年02月25日

新しい発展段階に進んだAIMRは、研究活動とキャリア構築をサポートする最高の環境づくりをすすめている。

東北大学原子分子材料科学高等研究機構(AIMR)は、世界トップレベル研究拠点プログラム(WPI)によって最初に創設された拠点の1つであり、2007年の設立以来、革新的な新材料の創出を通じて社会に貢献し続けている。AIMRのめざましい活動成果のなかで特に際立っているのは、材料科学と数学を結びつけた学際研究プログラムである。これは、数々の重要な発見を可能にしたAIMRの特筆すべき「融合研究(分野を超えた共同研究)」の新しい試みであり、前例のない数学とのコラボレーションが生み出す成果に、材料科学コミュニティーから大きな期待が寄せられている。

共通機器ユニットは、電子顕微鏡や光電子分光装置などの研究に必須な装置を、AIMRの全ての研究者が利用できるようにするために設立された。
共通機器ユニットは、電子顕微鏡や光電子分光装置などの研究に必須な装置を、AIMRの全ての研究者が利用できるようにするために設立された。

AIMRはすでに多くの実績を挙げているが、その成功をもたらしたのは、材料科学、物理学、化学、工学、数学を専門とする総勢130人以上の研究者チームである。AIMRはさらなる飛躍を目指し、研究者にとって魅力的で強力な支援体制を整えるために尽力している。AIMR副事務部門長(研究担当)の池田進准教授は、「AIMRの設立から5年間、私たちは多くの貴重な経験を積んできました。そして今、これまでの経験を足がかりに、研究に打ち込むすべての研究者に最高の支援を提供できる段階に達したのです」と語る。

AIMRは、新しいメンバーや海外からの研究者が研究に着手するにあたって直面するであろういくつかの問題点を洗い出した。そして、従来から在籍するスタッフの声も参考にしながら組織や設備のあり方について検証を行い、これらの問題を解決し、新しく着任した研究者でも効率よく研究を進められるように全面的な支援体制を作り上げた。綿密な計画と準備を経て開設された研究支援センターは、「共通機器ユニット」「計算支援ユニット」「数学連携ユニット」「研究者支援室」の4部門から構成されている。

全員が利用できる実験機器

共通機器ユニットには日本語と英語の両方に堪能なスタッフが所属しており、研究者の実験デザインの支援やトレーニングを行う。
共通機器ユニットには日本語と英語の両方に堪能なスタッフが所属しており、研究者の実験デザインの支援やトレーニングを行う。

多くの海外の大学や研究機関では、研究者が共通の設備や機器を容易に利用できるシステムが備わっているが、AIMRでは大抵の実験機器はそれぞれの研究室に属している。そのため、新しいメンバーや短期滞在研究者は正式な共同研究の形をとらないかぎり、機器を使用するのが困難になる可能性がある。この問題に対処するため、電子顕微鏡やX線回折装置、光電子分光装置など研究に必須な基盤機器を提供する共通機器ユニットが設置された。さらに、関連機関が所有する実験装置も利用できるシステムも整えられた。池田副事務部門長は、「研究者からは、研究の目的に合った装置の特定から適切な実験や測定手法に関する助言、さらに英語でのトレーニングまで多くの要望が寄せられ、共通機器ユニットはできる限りそれらに応えてきました」と説明する。

スムーズなスタートのために

材料科学のさまざまな領域と数学を結びつける革新的な戦略は、集中的な理論研究と数値計算を必要とする。AIMRは、こうした野心的な研究を支援するため適切で効率の良いインフラが必要不可欠であることを、よく理解している。計算支援ユニットは、研究者が新規プロジェクトを円滑に立ち上げるためのプラットフォームを提供する目的で設置された。AIMRの理論家が運営するこのユニットが、計算機関連の共通機器の提供から計算手法のアドバイスまで計算にまつわる支援を多岐にわたって行うことは、新しいメンバーや短期滞在研究者にとって大きな助けになるだろう。池田副事務部門長は、「共通機器ユニットと計算支援ユニットは、研究プロジェクトの初期段階だけでなく、その後も継続的に支援を提供することにより、その研究が確実な成果を出せるように導きます」と言う。

材料科学と数学の融合

数学連携ユニットは、材料科学者と数学者の交流を促すための合同セミナーを企画し、互いの専門知識を相互に役立てられるように努めている。
数学連携ユニットは、材料科学者と数学者の交流を促すための合同セミナーを企画し、互いの専門知識を相互に役立てられるように努めている。

材料科学は伝統的に経験に頼る部分が大きく、試行錯誤を重ねながら研究を進めてきた。これに対して数学は、明確に定義されたパラメーターを設定し、それに応じた理論を構築して検証を行う。これまでの研究者の努力により、2つの分野間のギャップはかなり埋められてきたものの、この協力体制を維持するにはさらなる取り組みが必要となる。数学連携ユニットは、AIMRの材料科学の研究者と数学者の間のコミュニケーションを円滑にし、外部の数学コミュニティーとの交流を促進するために設立された。特に、東北大学応用数学フォーラム(AMF)との連携に大きな役割を果たしている。2012年6月に初の合同セミナーを開催して以来、これまでに同様のセッションを3回開いて両者の関係を強化してきた。

キャリア構築から日常生活まで全面的に支援

AIMRは、どんなに才能ある研究者であってもキャリアを発展させるために、援助が必要であることを理解している。研究スタッフは、時には個人的な問題や家族の問題を抱えることもあるだろう。スタッフの福祉の充実を約束するAIMRは、研究支援センターの第4の部門として研究者支援室を設立した。池田副事務部門長は、「キャリア形成に重要な高度なライティング技術を若手研究者に身につけてもらうため、研究者支援室の協力のもとでマクミラン・サイエンス・コミュニケーションの指導によるサイエンスライティングと出版に関するワークショップを開催しました」と説明する。メンター制度も始まり、若手研究者が上級研究者とつながりを持ち、研究者としてより有利なキャリアを構築するための大きな支援を受けられるようになった。研究費の申請や就労ビザの申請・更新などの事務手続きのほか、日常生活に関する問題に対応する支援もある。「外国人研究者にとって、仙台での生活に慣れることが研究を効率的に進めるうえで非常に大事であることを、AIMRはよくわかっています。すべての建物に研究者支援室を設置し、彼らが生活の基盤を円滑に整えられるようにあらゆる支援を行っています」。

世界レベルの研究所へ

新しい研究支援センターが設立されたことで、AIMRの研究者はその能力を十分に発揮し、目標を達成するためのハイレベルな包括的支援を受けられる環境を手にした。次の発展段階に進んだAIMRは、今後も世界中の第一級の研究者を引きつけつつ、卓越した研究システムと理想的な職場環境を提供する世界レベルの研究所へと成長していくだろう。