有機オプトエレクトロニクス: 汎用的な電極

2017年12月25日

特殊な構造の電極を用いることで、有機半導体に電子と正孔の両方を注入することができた

研究に使用した実験装置の写真。同じ材料でできた電極で、有機半導体に電子と正孔を注入することができる。
研究に使用した実験装置の写真。同じ材料でできた電極で、有機半導体に電子と正孔を注入することができる。

© 2017 Thangavel Kanagasekaran

有機材料でできた柔軟な半導体に電子と正孔(正電荷を持つキャリア)の両方を注入できる電極が、東北大学材料科学高等研究所(AIMR)と東北大学大学院理学研究科の研究チームによって開発された1。この電極は、高性能有機オプトエレクトロニクスデバイスのほか、有機論理回路や有機レーザーを実現できると期待される。

有機半導体には、シリコンを用いて作製される従来の半導体に勝る多くの利点がある。まず、柔軟性があるため、ウエアラブル電子デバイスやスマート衣類に用いることができる。また、印刷可能で軽量であり、低温で作製することができ、発光効率も高い。しかし、無機半導体とは違い、有機半導体に電子を注入することは困難である。電子注入電極に適したカルシウムなどの金属が空気中で不安定だからだ。

今回、AIMR のThangavel Kanagasekaran助手らは、構造の乱れがある多結晶有機半導体層を金属薄膜と鎖状炭化水素層で挟んだ、ユニークな三層構造を持つ電極を考案することにより、この問題を克服した。

この電極のキャリア注入機構はこれまでにないもので、キャリア注入障壁が非常に低くなるため、電極に用いる金属材料にかかわらず、電極と有機半導体の間の接触抵抗は非常に小さい。また、有機半導体に正孔と電子を注入するには、これまでは正孔注入用と電子注入用とで異なる材料でできた電極を用いる必要があったが、今回の電極は電子と正孔の両方を高い効率で注入することができる。

研究チームは、自分たちの電極の可能性を実証するため、有機半導体単結晶を用いた電界効果トランジスタにこれを使用してみた。その結果、二端子法で過去最高となる電子移動度と正孔移動度を達成することができた。この電極は、有機半導体からの大電流密度での高輝度発光も可能にした。

Kanagasekaran助手は、「この構造では、キャリア注入の有効障壁高さがほとんど金属に依存しないため、空気中で安定なあらゆる金属を用いた電子注入が可能になります」と説明し、「この方法の素晴らしいところは汎用性です。あらゆる金属や有機半導体に適用することができ、電子注入にも正孔注入にも使用できます」と付け加える。

Kanagasekaran助手によると、今回チームが用いた電極は空気中で安定しているが、トランジスタに用いた単結晶有機半導体を空気にさらすと電子伝導が妨げられてしまうという。チームは現在、空気中で動作可能なデバイスを開発することで今回の手法を拡張しようと取り組んでいる。

References

  1. Kanagasekaran, T., Shimotani, H., Shimizu, R., Hitosugi, T. & Tanigaki, K. A new electrode design for ambipolar injection in organic semiconductors. Nature Communications 8, 999 (2017). | article

このリサーチハイライトは原著論文の著者の承認を得ており、記事中のすべての実験データは同著者から提供されたものです。