ブロックコポリマー: ウイルスをまねる

2017年09月25日

ウイルス様ポリマー粒子が作製され、実験室で人工分子マシンが合成される日が近づいた

粒子中に相分離構造を形成することによって、表面に突起が規則的に並んだウイルス様粒子が作製された(左上)。この粒子を酸で処理すると、分解して小粒子が生成する(右下)。
粒子中に相分離構造を形成することによって、表面に突起が規則的に並んだウイルス様粒子が作製された(左上)。この粒子を酸で処理すると、分解して小粒子が生成する(右下)。

The Royal Society of Chemistryより許可を得て参考文献1より改変。

東北大学材料科学高等研究所(AIMR)の研究者と2名の共同研究者が、2種類のセクション(ブロック)からなるジブロックコポリマーを用いて、ウイルスに似たナノ粒子を作製した1。このナノ粒子は、大きさだけでなく表面構造もウイルスと似ているため、ワクチン、薬物送達、感染症の検査など、さまざまな応用が期待される。

ウイルスは、基本的に遺伝物質がタンパク質の膜に包まれた構造をしており、その表面にはタンパク質の突起が規則的に並んでいる。合成ポリマーからウイルス様粒子を作製することは化学者たちの夢だった。そうした粒子は、ワクチンとして役立つだけでなく、遺伝子や薬物の送達にも利用できると考えられるからである。しかし、自然と同じ方法でモノマー(ポリマーを構成する単位)の並び方を制御するのは難しく、ナノ粒子の中に異なる相からなる構造体を形成することも困難だ。

今回、東北大学の大学院生の平井裕太郎氏は、AIMRの藪浩准教授と積水化学工業株式会社の脇屋武司氏とともに、表面に突起が整列したウイルスのような球状ポリマー粒子(画像左上)を作り、そうした構造体を実現した。

研究チームのウイルス様粒子には、ポリスチレンのセクションとポリブチルアクリレートのセクションが末端でつながったジブロックポリマーが使われている。このジブロックポリマーに第3の成分としてさまざまな分子長の純粋なポリスチレンを加えることによって、粒子の表面形状を変えることにも成功した。

平井氏は、「今回の結果は、多岐にわたる応用が期待される合成分子マシンの実現に向けた大きな一歩です」と言う。「例えば、密度を制御して抗原や抗体を突起に固定することができるでしょう。そうした粒子を使えば、効率が良く感度も高い免疫アッセイが可能になります」。

「突起に酵素や触媒を固定して、体内の特定の部位に輸送することもできるでしょう」と平井氏。「従来の滑らかなナノ粒子と異なり、抗体や触媒の密度と位置を制御することができるので、そうした分子どうしが凝集するおそれはありません 」。

このウイルス様粒子は、酸で処理すると分解されて直径わずか数十ナノメートルの娘粒子になる点でも、本物のウイルスによく似ている(画像右下)。ウイルスが細胞内に侵入する際には、環境条件に応答してバラバラになった後、自らのDNAを送り込むからだ。

研究チームは、今後、ウイルス様粒子を触媒や酵素で相選択的に修飾し、従来の球状粒子より優れた化学的性能を持たせたいと考えている。

References

  1. Hirai, Y., Wakiya, T. & Yabu, H. Virus-like particles composed of sphere-forming polystyrene-block-poly(t-butyl acrylate) (PS-b-PtBA) and control of surface morphology by homopolymer blending. Polymer Chemistry 8, 1754–1759 (2017). | article

このリサーチハイライトは原著論文の著者の承認を得ており、記事中のすべての実験データは同著者から提供されたものです。