一つのサイエンスの種|阿尻研究室|東北大学 WPI-AIMR 原子分子材料科学高等研究機構ソフトマテリアルグループ多元物質科学研究所プロセスシステム工学研究部門 超臨界ナノ工学研究分野

超臨界を語る

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【Vol.11】一つのサイエンスの種

超臨界を語る|阿尻研究室ハイブリッド材料は、これを使って物を設計できる段階ではまだありません。今までナノ粒子や、材料の大きさを自在に制御するという技術はありませんし、またその材料がどのような溶媒に溶けるか、どういったプラスチックと混ざるかといった性質を作る技術も確立されていません。つまり、ナノ粒子系の相平衡です。

ナノ粒子をパイプの中を通してあるいは分散させて別のリアクターで混ぜる場合には、ナノ粒子が高密度に分散した液体として扱われなければいけません。どれくらいのポンプを使用してパイプへ通せばよいかという設計をするためには、その密度と粘度が決め手となります。これを予測できないと工場を設計はできません。次に、最終的にこの粒子を別の物質と混ぜる場合にも、その物性がわかっていないと混ぜることができません。粘性だけではなく、密度や表面張力も重要な特性となるわけです。先に、フルイディックセラミクスと言いましたが、その物性の予測が必要になります。

超臨界を語る|阿尻研究室東北大学には、相平衡、物性推算の世界拠点があることを初めに説明しました。このような新たなサイエンス創成の場として、もっとも重要な場がここにあると言っても良いかと思います。すでに、相平衡推算、物性評価で著名な、工学部の猪股教授、佐藤准教授にも教えていただきながら、研究をスタートしています。計算化学工学分野で著名な、工学部の塚田教授とも共同研究を進めていますし、多元研の加納教授にもご指導いただいています。

もっと基礎的な面での研究も必要になります。そもそもナノ粒子は、粒子として扱うべきなのか、分子として扱ってよいのかといった課題もその一つです。粒子径が4桁以上大きく異なる粒子を混ぜた場合、小さな粒子の挙動は全体の粒子群の挙動にどのように影響するのでしょうか。計算科学というのはかなり発達してきていて、大型の計算機を使えば、分子レベルで物を扱えるようになってきました。分子など小さなレベルと粒子などの大きなレベルが混ざった時、その挙動を同時にシミュレーションできるというところまではまだ到達していません。そこで新しい数学の力を用いて、同時にシミュレーションできるような手法の開発を数学の先生方と一緒に開発しています。新しいサイエンスへのチャレンジです。